開示アプローチ ~ディーバが推奨する現実的アプローチ~ ディーバ社のIFRS自主適用における「開示アプローチ」の実際
IFRS自主適用の背景
ディーバ社自身におけるIFRS対応は、任意適用をしない我々にとっても無縁のものではなく、近い将来にIFRSが強制適用されることになった際のことを想定すると、一大イベントであるIFRS対応を、身をもって体験しておくことはとても重要である。われわれの持つ製品、サービスを試すことによって、そこでのエッセンスをこれからの製品やサービスへ織り込むことも可能になるだろう。 また、IFRSを参考にした財務数値を認識できることは、日本基準とは異なる姿を見せてくれる意味で有用な取り組みになることが期待できた。 そして、今回のディーバ社のIFRS自主適用で採用し実践したのが「開示アプローチ」である。開示アプローチの必要性
一般的なIFRS対応では、従来の会計基準とIFRSとの間の各論点に関する相違点を積み上げ、それらの自社への数値面およびシステム・プロセス面への影響を分析していくことが多い。それはそれで必要不可欠なステップではあるものの、そのような分析結果から対応を推し進めていくことで、結果的に回り道をしてしまったり、本当は必要のない作業まで手を出してしまったり、あるいは逆に検討が必要な事項について対応できなかったりすることが起こりうる。ターゲットとするゴールイメージが明確になっていないからである。 そこでお勧めしたいのが「開示アプローチ」である。開示アプローチとは、ひとつの重要なゴールである「開示」からアプローチし、IFRS適用にあたってのギャップを埋めていく進め方であり、基準差異調査の積み上げ型情報分析と組み合わせることで、過不足なく後戻りのない対応を実現するものである。 ここで留意して欲しいのは、開示アプローチは決して法制度上求められている開示に関するIFRS対応だけを実現しようとしているのではないということである。IFRSが企業活動に与える影響は非常に広範囲であることは間違いなく、経営管理の領域、例えば予実管理のPDCAサイクルから、部門・グループ会社の業績管理、個人の業績評価などにも影響する。ただ、これらの課題について同時並行で議論していくことは得策ではない。それぞれの目的や深い関連性を持つ対象者も多岐に渡るため、議論が混沌としてなかなか前に進めない状況に陥る可能性がある。「開示」というひとつの重要なゴールをIFRS対応の最終ゴールとして設定、認識することで、影響分析を始めその後のアクションを加速できることになる。 つまり「開示アプローチ」とは「開示」という切り口でIFRSへの道を切り開き、グループ経営管理全体でのIFRS対応を効率的・効果的に推し進めるアプローチだといえる。開示アプローチの進め方
次に「開示アプローチ」の具体的な進め方、そして「開示アプローチ」で重要になる「開示モデル」を説明しよう。 最初のフェーズでは、開示情報のモデルを作成し、そのモデルと現在の開示情報との差異を明確にする。モデル作成にあたっての比較対象情報としては、金融庁の開示例や既に開示を行っているベンチマーク企業の開示資料、さらには各アカウンティング・ファームから提供される雛型がある。これらのインプットをベースにして各企業における開示に対する姿勢(開示ポリシー)を明確にし、さらにその判断基準を確立することにより、まずは目次レベルでのモデルを作成することになる。 次に、上記比較対象資料と照らし合わせながら、自社の財務諸表で開示する勘定科目を決めていく。ここで、会計基準差異の影響分析結果が生かされてくる。例えばIFRSを適用することで追加される有給休暇引当金の勘定があれば、開示上は「その他」等の勘定に含めて表示するものの、各会計システムでは新規に勘定科目として新設するなどの見極めにつながっていく。 また、注記などの財務諸表以外の開示情報についても、各比較対象資料および自社の状況から注記として記載すべき事項を決めていき、注記ごとに金額は確定しないまでも概算レベルで実際の注記を想定したアウトラインを記述していく。こうして「開示モデル」として、網羅的な開示書類のイメージが出来上っていくことになる。 次に、現在の開示情報とのギャップ分析に移る。簡単に表現すれば前述の「開示モデル」と現在作成している有価証券報告書のそれぞれの内容を比較し、掲載内容のギャップ(情報範囲のギャップ)を抽出していく。そして、当然ながら、開示対象は同じではあるが会計処理の違いによって数値に違いが出てくるもの(質的なギャップ)も抽出する。 ここまで進めることにより、網羅的に把握したギャップに関して、その解消の手立てを策定し、実際の導入フェーズに入っていくことになる。解消の手立て、ロードマップを考えるにあたり、その手立てが「個別業務」で対応が必要なものなのか「個別会計」の領域で反映されてくるものなのか「データ収集」「連結処理」「開示」それぞれのプロセスで、どのような対応が必要になるのかを整理することで、開示まで見渡した対応が明らかにされ、後戻りのない効果的なIFRS対応である「開示アプローチ」が成立することになる。開示アプローチの実施時期
IFRS対応について、いつからどのように取り組むかは重要なテーマである。日本における強制適用は一番早い想定で2015年3月期からになると言われている。 一般的に、導入ステップとしては、影響分析、プランニング、導入・展開、本番移行と分けることが多い。その初めのステップ、影響分析とプランニングにおいて、どれだけ「開示」を意識できるかが「開示アプローチ」の重要なポイントになっている。 適用ターゲットを2015年3月期に置くとすると、比較対象年度は2014年3月期となり、その期首財政状態計算書として2013年3月末の財政状態計算書が必要になる。その事前の導入・展開期間を最低限の1年間確保して2012年3月、そのためのプランニング期間6カ月とバッファー期間6カ月を見込んで2011年3月。そのように考えると、最初のステップ、影響分析は今年度中に実施する必要があることになる。効率的なIFRS対応とはいえ、仮定としての2015年3月期の強制適用時期に間に合わせるには、今年2010年には開示アプローチでのIFRS対応をスタートさせることが重要である。※本記事は、ディーバ社PR紙 「Arc(アーク)」 第3号掲載の記事を抜粋したものです。





