2010.07.07

第102回 (A) IFRSによるGAAP調整が経営能力のGAP調整をもたらす…?【経営・会計最前線】

取締役 ビジネスソリューション本部長 兼 社長室長 川本 一郎

「IFRSによるGAAP調整が経営能力のGAP調整をもたらす」。
先日、部下が「今日訪問した○○社の担当者が面白い方でIFRSについてこんなこと言っていました。」と営業先から帰ってきて教えてくれた言葉です。趣旨はどうやら、今はどの企業もIFRSの導入に際しGAAP差異による影響額算定に余念がないが、本当に調整対応が必要になるのは財務基準の共通化によってもたらされるある特定の現象に対してであり、それは経営者の経営能力が世界共通でガラス張りになってしまうことだ、ということのようです。

なるほどこれまで国ごとの会計基準に守られてベールに包まれていた経営者の能力が世界中で比較可能となることで、国を超えた市場原理による淘汰を通じ世界中の経営者の能力較差(GAP)が解消に向かうというのでしょう。額面通りに受け取ると企業の経営者層からしてみれば安穏としていられない状況になるな、とこれを聞いて感じますが、果たして肝心のIFRSが経営者の能力を本当に反映するものになるのか、この言葉を聞いて少し考えてみました。

まずIFRSは「BSアプローチ」と「原則主義」で特徴づけられるとされています。前者の「BSアプローチ」は経営者の事業価値を高めるために行った資源配分や投資などの活動結果を純資産価値の増減という形で投資家に明示しますし、後者の「原則主義」は経営者の会計に対する解釈能力を示すものです。単純に考えれば経営者の経営能力を端的に表しているとも言えそうです。

しかし、「BSアプローチ」については時価会計の行き過ぎを懸念する声が多いのも事実です。金融資産の時価評価や海外資産の為替レート変動で包括利益が大きく変わることを考えると、リスク管理が経営者の重要な責務であるとはいえどこまで責任を負うべきか議論は百出するはずです。現に金融不況後の金融機関への規制強化の流れの中で短期的な業績向上に基づいた報酬が問題になったように資源配分や投資活動の結果は中長期でしか評価できないことを考えると、会計基準にも何らかのガバナンス上の仕組みが必要になるかもしれません。

また、「原則主義」に関しても固定資産の償却年数以下の在任期間しかない経営者が真の償却年数を設定できるのか疑問を抱かざるを得ません。場合によっては次代の経営者に負債を繰り越すリスクが発生することも考えられます。

このように単純に経営能力を反映するとは言い難いIFRSですが、一方で筆者は「BSアプローチ」こそ日本のような成熟市場では今後重要になると考えています。つまり経済が発展段階にあった一昔前には市場のパイ全体が増えていたため資本効率の追求や事業資産の入れ替えにあまり気を配ることなく販売強化や受注拡大による新たなパイ獲得に集中していれば事足りました。しかし、市場が成熟した現在の日本では資本政策や投資活動等を通じて事業資産と経営資源をいかに有効に配分していくかが競争差別化につながります。

また少なくともグローバル規模での基準統一により海外投資家の目線が相対的な地位低下のトレンドに悩む日本市場に注がれるようになれば日本の経営者が海外市場を意識するきっかけにつながるとも感じています。

よって、IFRSは経営能力を反映するという面では課題を抱えつつも日本の経営者の意識や目線を確実に変える力を持っているのではないでしょうか。だとすると日本企業もGAAP調整よりGAP調整にもっと着目した方が良さそうです。

弊社はこのたび企業の「BS経営」強化に向けたグループ経営の高度管理ソリューションDivaSystem GEXSUSを開発中です。近日中にリリース予定ですのでHP上で紹介しております。是非ともご覧ください。

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