2010.08.24

第105回 (A) IFRS自主適用はじめました!【経営・会計最前線】

商品開発本部長 公認会計士 中山 立

「かき氷はじめました!」「冷やし中華はじめました!」
夏になると目立ち始めるこのような貼り紙。今年はこれらが、例年以上に魅力的に感じるほどの暑い日々が続いておりますが、皆様いかがお過ごしでしょうか?
この手の貼り紙、他の季節ではあまり目にしないのは何故なのかは存じませんが、とにかく夏は「はじめました!」が似合う季節なのでしょう。
弊社にとっても今年の夏の「はじめました!」があります。IFRSの『自主適用』です。

これは、法定開示は従来通りの日本基準に基づいて行う一方で、自主的にIFRSに基づいた連結財務諸表(*)も作成して、これを任意情報として開示してしまおうという取り組みで、一部の企業がすでに取り組んでいる、強制適用に先立って法定開示のための連結財務諸表をIFRSに基づいて作成する「任意適用」とは異なるものになります。
(*)非監査の情報であるとともに、あくまでも「IFRSを参考に、試行として作成した連結財務諸表」という位置づけになります。

実は弊社でも、IFRSへのアドプションの流れが加速化する中、「IFRSに関する製品・サービスを提供していく立場として、自らがそのプロセスを経験しておくことは非常に重要である」との考えから、早期の任意適用を志向しておりました。しかし、金融庁から出された「中間報告」において(最終的には内閣府令において)任意適用が認められる企業の要件が示され、残念ながらこれに合致しない弊社はIFRSの適用を断念せざるを得ませんでした。

しかし、その数ヵ月後のある日、代表の森川から「法定開示を従来どおりきちんとやったうえで、それにプラスして自主的にIFRSを適用する分には制限を受けるものではないであろう」ということで自主適用実施の号令が下り、この取り組みがスタートすることとなりました。
体制としては、経理部門が従来の業務だけでもかなり厳しい状況であったことから、普段はお客様へのサービス提供や製品開発を実施しているメンバーを中心にプロジェクトチームを結成し、ギャップ分析、会計方針案の策定、過年度財務諸表の作成などの作業にあたることとなり、私自身も参画する機会を得ました。

一連のプロセスを通じて最も感じたのがやはり経理部門の負担増です。
今回、私どもは別体制を組んでのぞみましたが、それでもGAAP調整のための基礎情報の準備、グループ会社との各種調整、会計方針の検討・決定など多くの部分で経理部門に時間を割いてもらう結果となりました。そもそもこのような別体制を組むことが困難な企業も多いと思われますし、別体制を組んだ場合でも、今回と同様、日本基準の決算チームの関与が必要な場面もそれなりの規模で存在するため、一定の負担増になるのは間違いないでしょう。

また、導入初年度についてはIFRSと日本基準の並行開示というかたちで双方の決算を行う必要がありますが、だからといって開示日程を従来よりも遅らせるという対応をとることはほとんどないのではないかと思われます。つまりは、まず日本基準の数字を固めてそこからIFRSへの組替を行うというプロセスを想定すると、第一段階の日本基準の決算については、従来よりも早期に完了できる必要があるわけで、この観点からも負担は増加すると考えられます。

このような負担増に対応することを考えると、強制適用時やそれに準ずるタイミングでIFRSの適用を予定されている企業におかれましても、早い段階から日本基準決算のさらなる早期化に取り組んでおき、「いざ、IFRS!」という段階での負担増に対応できるだけの余力を今のうちに創出しておくことが極めて重要であると感じました。

一方で、当初想定したよりもインパクトが小さいと感じた点もありました。(あくまでも弊社での例であり、業種・業態や規模等によってはこの限りではないとは思います。)
まず、1点目はGAAP調整の必要な項目です。当初、GAAP調整候補として検討対象となる項目を洗いだした際にはかなりのボリュームがピックアップされ、この先の作業がどうなることかと不安に思ったものですが、ひとつひとつの論点に対して検討を進めていくと、日本基準と同様に処理することになったものやそもそも該当しないものも多く、最終的にGAAP調整を行うこととなったものは当初ピックアップしたものの10分の1程度に落ち着きました。

もう1点は利益への影響です(仕訳を直感的にイメージした場合と比較して)。例えば収益認識ですが、日本基準では発送基準で認識しているソフトウェアライセンスの売上について、IFRSでは到着基準を採用することとしました。この場合、期末近辺の分の売上が翌期の認識として減少することになり、直感的にはこのインパクトが頭に浮かびますが、その一方で期首分の売上は増加するため、PLへのインパクトという意味では僅少なものでした。また、引当金の計上等のオンバランス化についても、BS計上額はそれなりの金額であっても、PLインパクトの大部分は開始BSの剰余金の調整で吸収されることになり、毎期の繰入については限定的な金額となりました。

これらのように自主適用というかたちで実際にやってみることにより、机上で考えていただけでは見えなかった様々な「気づき」を得ることができ、「実践すること」の重要性を強く認識しました。(2点目については少し考えれば当たり前の話で適切ではないかもしれませんが。)
また、経営陣にIFRSに基づいて作成した連結財務諸表を見せながら報告を行った際には、「実際にIFRSを適用した際には業績評価をどのようにやっていくべきか?」という議論に発展するなど、経営者は経営者の視点での「気づき」があったのではないかと思われます。

本件には、CFO、経理担当、コンサルタント、製品開発担当など、社内の様々な立場の人間が関与しましたが、それぞれの立場・視点に応じて得るものがあったことでしょう。
9月上旬にはこの自主適用の結果に関する情報を発信できるよう鋭意準備中ですが、財務情報だけではなく、関与したメンバーによる分析や所感、適用にあたっての四方山話なども順次報告して参る予定ですので、ぜひともご期待ください。
もちろん弊社のミッションとしては、この経験で得たものを製品・サービスに反映して多くのお客様にご提供して行くことが最も重要なのは言うまでもなく、こちらも尽力して参りますので、あわせてご期待ください。

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