2010.10.20

第109回 ルカ・パチョーリ あるいは優雅なる国際会計【経営・会計最前線】

事業企画担当部長 IFRS推進委員 玉村 健

IFRSを採用するにあたり、個別会計システム統合や管理会計と関連付ける必要が無い企業でも、決算業務に何らかの影響が出るのは避けられません。この外部要因に伴う変革は、対応が遅れていた内部的な課題対応のチャンスと考えることができます。
と、ここまで書くと「な~んだ。また煽り系か?」と思われるかもしれません。
しかし!変革とは”複雑にすること”ではありません。経理部門や情シス部門では「IFRS対応が大変だ」となりがちですが、このIFRS対応をきっかけに、決算をより楽チンな方向に変革するということも可能なはず。
これを、”どさくさにまぎれる”と言います。IFRSのどさくさにまぎれて、決算をもっと簡単にしてしまうという発想も”あり”じゃないでしょうか。
そもそも(連結)決算の目的は、以下の2つしかありません。
(1)投資家を中心とした利害関係者への情報提供
(2)経営者への情報提供
決算におけるゴールは、投資家や経営者が必要とする情報を提供することです。実は多くの決算現場にて、この点を見失いがちです。
ここで、冒頭の疑問にぶち当たります。「連結財務諸表や連結仕訳は、バランスしている必要があるのか?」、「バランスのために情報の提供を遅らせていないか?」という疑問です。投資家や経営者にとって、連結財務諸表やその作成経過の連結消去仕訳がバランスしていることが本当に重要でしょうか。むしろ知りたい情報が早く入手できることの方が重要なはずです。

やや話がそれますが、当社が担当するIFRSプロジェクトでは、情報システムを”基幹系システム”と”情報系システム”に分類するところから始めます。
会計システムの一連のプロセスのうち、各種個別業務システム及び個別会計システムは、業務プロセスと密接な関係にある「基幹系システム」と位置付けます。
「基幹系システム」では現物管理を目的として実態のあるデータが管理され、リアルタイムに近い頻度でデータが更新されます。
一方、個別会計システムで処理された後のデータから、開示/IRにつながる連結会計システムまでは、業務プロセスと結びつきが薄く、”意志”決定を目的としたデータを取り扱う「情報系システム」と位置付けることができます。
「情報系システム」のデータには、利益など計算によって導き出されるバーチャルなものも含まれ、月次や四半期など区切られた期間でデータが更新されます。
IFRSへの準拠が求められるのは連結開示です。情報系システムでの対応を基本として整備を進めて行くアプローチが、効率的なIFRSプロジェクトを実現する解であり、多くのお客様にご理解いただいております。

バランスの話に戻ります。
貸借バランスは複式簿記の基本であり、複式簿記は基幹系システムの記帳方法であることは間違いありません。一方、情報系システムでは複式簿記が絶対とは言い切れません。
連結財務諸表は複数通貨建財務諸表の集合体です。また、未実現利益や少数株主持分、連結調整勘定や為替換算調整勘定、さらに税効果調整・・様々なバーチャルな調整が行われます。
こう考えると、情報系システムにおいて絶対的なバランスを求める方が、不自然だったりしないでしょうか。

多くの日本企業の連結決算業務は、複式簿記での記帳を基本として進められています。IFRSをきっかけに、貸借バランスから開放されたシンプルな決算業務を確立し、経理部門の皆様が優雅なる国際会計時代を迎える。というのは、果たしてファンタジーでしょうか?
ファンタジーかもしれませんねぇ。

【最後に】
メルマガという字数に制限がある場のため、会計理論には触れることは控えました。「連結財務諸表はバランスしている必要があるのか」という点につき、IFRSのトピックである資産負債アプローチ、経済的単一説と関連して考えても、結構楽しいです。秋の夜長、連結財務諸表のバランスの意義につき考えてみてはどうでしょう。

【おまけ】
このメルマガを書くにあたり、当社内からも「ルカ・パチョーリって誰だ?」という声が挙がりました。ヨーロッパで複式簿記を広めたイタリア人で、近代会計学の父と呼ばれている人です。
音楽で例えるとバッハといったところでしょうか。

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