2010.11.16

第111回 (A) 内部統制と情報開示~尖閣諸島問題に少し思ったこと~【経営・会計最前線】

業務推進本部 管理部長 守田 浩之

日本でCOP10(生物多様性条約締約国会議)やAPEC(アジア太平洋経済協力会議)の社会的・経済的な国際会議が開かれる直前を狙ったわけではないであろうが、中国漁船による海上保安庁の巡視船への衝突事故に端を発した「尖閣諸島問題」は、ロシア大統領の北方領土訪問と並び日本の外交問題に物議をかもしだしているが、「尖閣諸島問題」では衝突シーンのビデオ流出により、領土・外交問題のほかに情報統制(情報漏洩)と情報開示への問題が取り上げられ議論の的となっている。
この問題には、財務報告にかかわる内部統制と企業の情報開示にも同様な論点が含まれているのではないだろうか。
ニュース等でも報道されているように、問題の一つには、流出した衝突シーンのビデオそのものの情報価値やビデオが既知の事実か機密情報にあたるのかという情報の質の問題。もう一つには、ビデオそのものの流出という情報統制・セキュリティにかかわる組織・リスク管理の問題であり、情報開示の問題である。扱う情報の内容は別にして、財務情報の価値と機密性と公共性、並びにその目的を考えてみると、内部統制の整備・改善(効率化・簡素化)の方向性を示唆してくれているように思う。

決算にかかわる情報を中心として、コーポレートアクション等適時開示の対象となる企業情報は、言うまでもなく公表されるまではインサイダー情報として厳重な情報統制が必要な情報でありながら、投資家の意思決定(投資判断)に必要かつ、すべての投資家に公平に共有される情報でもあり、開示の即時性もさることながら、開示される前後でその情報がもつ意味と取り扱いが大きく異なる。(公表に関してはそれまでの厳格な情報統制から企業理解と説明責任としてIR等任意開示に至る積極的な周知、コミュニケーション・ツールとして情報活用される。)
しかし、財務情報の開示の時期・内容は決算短信、計算書類等、有価証券報告書で異なることや、事業計画・活動に伴うどこまでの情報が重要な企業情報と捉える(捉えられる)のか、いつその情報が必要かは、情報発信者の意図や情報受信者の目的により異なるのが現実と思われ、情報の内容とその価値の重みは時と状況と相手により変化する。

改めて適時・適切(という情報統制、情報セキュリティ)の重要性、難しさは非常にナーバスな問題であると感じるが、それを支えるのが内部統制であり、組織の構築・整備という不可分な存在である。どのような活動を行い、どのような組織を作るかは企業の事業目的によるが、どのような組織を作ってもそこに規律(統制)がなければ、個々の自律・自立(自覚)もなくなってしまうように思う。逆にいえば組織において、個性を発揮するのも組織の内部統制(組織の意図)の在り方次第とも思える。

内部統制の本質は、決して形式的な文書化や記録の保存にあるのではなく、「企業活動に内在し、自立・自発的に形成される」ことは教科書に書いてある通りだが、それは、事業目的・環境変化に対応する人材・組織の総合力であり、企業文化の基盤となるものであると思う。決して他に強要されるものではないはずである。そのためにも、制度に強制されるものではなく自ら作り出すものとなるように、今の自分の業務を振り返り、内部統制の整備・運用に今一度取り組んでみたいと思う。言うまでもなく、IFRSが適用され、より目的適合性が重視される財務報告を開示することとなれば一層、企業・事業活動の意図を反映した情報開示には欠かせない取り組みでもある。

とはいいつつ最後に…正直、制度対応の内部統制は負担(面倒)以外の何物でもない…。
~これも押しつけられ感が強く、真に企業の事業・組織活動から自発的なものとなっていない表れで、反省・改善の余地の大きいところと考え、今後の内部統制制度に関してはどのような改正となるかわからないが、組織活動と情報統制・開示の目的を誤ることのないよう取り組みたく思う~

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