2010.12.14

第113回 (A) 世界遺産 知床の海を漕いで【経営・会計最前線】

カスタマーサービス本部 営業部長 寺島 鉄兵

日本にはユネスコ世界遺産に登録された自然遺産が3つある。
そのひとつである知床は、山にはオオワシ、シマフクロウといった世界的な希少種が生息し、海にはサケ科魚類、海棲哺乳類等が生息する豊かな生態系を有する自然である。一方、年間の半分が雪に覆われ、冬には流氷で埋めつくされるその姿は、人間に対して極めて厳しい表情を見せつける。

その厳しい知床の海を、シーカヤックを操り、野営をしながら5泊6日の日程で半島を一周するツアーがある。以前は、同様のツアーが複数存在したそうであるが、その厳しさ、リスクの高さ故に、今では『知床エクスペディション』ただ一つが残るのみとなった。そのツアーを率いるガイドが新谷暁生氏だ。新谷氏は、プロスキーヤーである三浦雄一郎氏のアコンカグア登山にサポート・メンバーとしても参加をした冒険家でもある。

2010年8月、私はこのツアーに参加した。ツアー参加者は、ガイドを含め総勢約20名で、年齢、職業の多彩さは元より、私のようにシーカヤック未経験の者も多数含まれる。私の参加した回は、2010年の台風4号の日本上陸と重なった。風雨のピーク時にはどれだけ漕いでも前に進まず、激しい波で沖に流される者、コントロールを失い浅瀬に乗り上げる者などが続出し、急遽近場の野営地に戻り台風をやり過ごすなど、厳しい自然環境をひしひしと感じるツアーとなった。

ツアーで立ち寄る知床半島の大半の場所は、人間も居住しておらず、原始の自然のままである。無論、携帯電話の電波も通じず、唯一の情報源はラジオとなる。新谷氏は、ラジオ放送の気象情報を聞き取り、日本と周辺国の地図に、使い込んだ鉛筆で、丹念に気圧配置を書きこんでいく。そして、目の前の現実である波と雲の動きを睨み、ツアーの安全性を最大限に担保するための戦略を臨機応変に考えていた。思いおこせば、ラジオの気象情報をベースに、自分の手で天気図を起こし、読み解くその方法は、小学生か中学生の理科の授業で教わったシンプルな手法である。

シンプルな手法で客観情報を収集し、現場の事実を観察し、打ち手を講じるその姿勢は、ともすれば巨大化、複雑化しがちな経営情報システムに踊らされる、経営者、現場担当者へのアンチテーゼにも見えた。厳しい環境を生き残り、勝ち残るために本当に必要な情報は、我々が考えているほど複雑怪奇なものではなく、もっとシンプルなものではないだろうか。また、それを支える必要基盤も、もっとシンプルなものではないだろうか。そして何より重要なことは、市場の最前線で起きている事実を、自分の目と耳でしっかりと確かめる姿勢ではないだろうか。

世界中の山を登り、世界中の海を漕いだ新谷氏は言った。「経験は重要である。経験は役に立たないということを知るために」。

「経験は役に立たない」と悟りを開ける境地までの道のりの長さは想像もできないが、複雑な事象に惑わされることなく、物事の本質をシンプルに追求し、前進することが、唯一の方法なのであろうと感じた夏であった。

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最後に。弊社は、お客様のグループ経営品質向上のために、シンプルな仕組みで高い投資対効果を創出する製品の開発とサービスのご提供を目指しております。これまでの経営情報基盤のあり方に疑問をお感じの方はぜひご相談ください。

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