2011.04.13

第120回 (B) 4月を迎え【ディーバ哲学】

第三事業本部 ビジネスソリューション部 ディレクター 永島 志津夫

震災の影響が残り、原発・放射能に不安のある状況下、例年のような気持ちで4月を迎えることができずにおります。小さな子供たちが犠牲になったという報道には本当に忍びない思いです。そんな気持ちであっても、子供の入学式などの行事を迎えると、我々大人が努めて心を奮い立たせなければいけないとも思う次第です。このような状況下ではありますが、おつきあい頂ければ幸いです。

4月といいますと多くの企業で新入社員を迎えていらっしゃることと思います。弊社でも13名が入社いたしました。なかなか芯のありそうな、また将来を期待させる面々です。今回は時節柄、社会人のスタート時期にあたりアドバイスとなるような書籍をご紹介させて頂きます。

■「働くということ」 黒井千次 著(講談社現代新書)

黒井氏は1932年生まれの小説家です。富士重工業にお勤めされた経験もあり、本書はご自身の経験を中心に学生から社会人になっていく内面的な心の変化、迷い、働くことの問題意識などを平易な文書にまとめていらっしゃいます。本書の一部が中学校の入試問題にも取り上げられております。

―自分は国鉄職員であるからキップを切るのか、キップを切るから国鉄職員であるのか―
「4 仕事が自分の中にはいるまで」という章の冒頭、ある国鉄職員の手紙から、として紹介されている一節です。仕事そのものと、仕事をする人間と、仕事の実現する場とを考えていく上での重要な契機が含まれている、と黒井氏は述べられていますが皆さんはどうお考えになるでしょうか。
「仕事が自分の中にはいるまで」という表現ですが、仕事と自分との一体感がうまく表されていますね。
黒井氏も伊勢崎での4年間(当初は経理課だったそうです)は「仕事が自分の中に入る」段階にいたらず、本社異動後、企画調査部門の7年の間にその実感を得ることができたそうです。
みなさんも同じような経験をお持ちなのではないでしょうか。
我々も黒井氏と同様の経験や迷い、問題意識があったと思うのですが、すばらしい感性を持った黒井氏のように表現し、書き留めておくことは、少なくとも私はできずにおります。そしていつか忘れてしまうか、社会人常識となってしまい、「働くということ」の意味を他者に語ることができない、若い社員の疑問、悩みに答えることができない状況に至っているのではないかと思うのです。そのような状況において本書は新鮮であり、若手社員のみならず自分自身における働く意味についても考えるヒントになるように思います。

本書は「働き手」の立場で会社や組織、会社で働くということ、働く意味・意義などを考えさせる構成となっています。「仕事」を自分のものとして、人生における自己実現の対象として取組むことを一つのテーマとしております。もちろんそれは単純なことではなく多くの挑戦、失敗、疑問、迷い、悩み、そして運・不運の果ての理想ではあるのかもしれないですが、だとしても努めて自分の仕事に向き合うことの意義を語りかけてくれるのです。
好きなことを一生の仕事にできたらもちろん幸せでしょう。そうでなくても、今向き合っている仕事について、自分なりの工夫や思うことを実践すること、何がしか社会の誰かの役にたっているという実感、小さなことでも「自分の仕事」にすることが「働き手」自身の尊厳を守る上で大切であるということが伝わってきます。またそれが良い製品・サービスを提供し、責任をもってお客様に対応するという企業の基本姿勢につながるということも。
私が本書を知ったのは数年前なのですが初版は1982年とのことです。私自身いろいろ悩むことの多かった社会人2、3年目くらいに本書を知っていたらと思いましたが、今読んでも考えさせられたり、勇気付けられたりしています。

■「経営の本質」 マービン・バウワー 著(ダイヤモンド社)

もう1冊ご紹介させていただきますのは、コンサルティング会社としてのマッキンゼーの事実上の創業者 故マービン・バウワー氏の書籍です。ご存知の方も多いかと思います。
本書の内容はもちろん経営、ミドルマネジメント以上を対象としているのですが、会社・組織を運営していくこととはどういうことなのか、少なくとも本書を通して難しさが存在しているという事実を知ることは、若手社員にとっても有意義なことではないかと思います。経営も楽ではないですね。ただ組織の当事者同士で話しても伝わりにくいこともあるでしょうし、本書を通して苦労の一端を理解してもらうことも一案かと思います。
章立てを引用しますと、経営として押えるべきポイントが簡潔にまとめられていることがわかります。
第1章 経営の意思-意思あるところ道あり
第2章 経営理念-これが我々のやり方だ
第3章 戦略-我々はこの道を進み、こう戦う
第4章 行動方針・基準・手順-行動と戦略を結びつける
第5章 組織-人々を束ね、力を発揮させる
第6章 経営幹部-会社の宝を育てる
第7章 事業計画・業務計画とコントロールシステム-道順を決めるシグナルを設置する
第8章 計画から実行へ-社員を動かす

また先ほどの黒井氏の本と合わせて本書を読むと、立場の違い、日本と米国の違いもさることながら、いや実は同じような悩みや迷いを経営者も若手社員も抱いているという発見があり興味深いのではと思います。これは意外なことだと思われるかもしれません。本書中から引用となりますが、業界大手企業社長兼CEOのエピソードをご覧ください。
「あなたはもうお気づきだろうか。実は私は平社員からここまで出世する間に、社長になるのはどういうことか、一度も教わったことがない。それどころか役職者の心得といったものも、だれも教えてくれなかった。教えられたのはその時々に仕事をどうするかということだけだった」
いかがでしょうか?バウワー氏が当書をまとめ上げたねらいが、このエピソードに集約されているように私には思えます。

最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。
冒頭の話題に戻りますが、未曾有の悲劇にあって何の役にも立ってないことに不甲斐無さを感じることがあります。そんな折に黒井氏の本を読み返して思うのは、「そうではあっても職責を全うすることが自分たちの努めなのではないか」ということです。何ができるかわかりませんが微力ながら努力してまいります。
改めて、この度の震災の犠牲者の方々のご冥福を心よりお祈りいたします。

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