2011.04.27

第121回 (A) 「1」は30.1%、「9」は4.6%。不正会計にご用心【経営・会計最前線】

執行役員 商品開発本部長 公認会計士 中山 立

「1」は30.1%、「2」は17.6%、・・・・・、最後に「9」は4.6%。これは何の数字でしょうか?
プロ野球ファンの方からは「打順別の平均打率!」という声が聞こえてきそうですがハズレです。(これだと2番バッターがクビになってしまいます)
正解は「自然発生的な数字の集合体について、最高位の値(頭1桁目)にそれぞれの数値が発現する確率」になります。
この確率、直感的には「1」から「9」までいずれも11.1%(9分の1)になりそうな気がするのですが、実際はそのような一様な分布とはならず、「1」が約3分の1を占め、そこから「2」「3」「4」となるにつれ逓減していき、「9」になると20分の1以下になることが知られています(表1)。
これは「ベンフォードの法則」と呼ばれるもので、ここでは詳細は割愛します(難しくて私にはさっぱり分からないので)が、数学的にもきちんと証明されているものだそうです。

(表1)ベンフォードの法則に基づく最高位の値への出現確率

最高位の値 1 2 3 4 5 6 7 8 9
確率 30.1% 17.6% 12.5% 9.7% 7.9% 6.7% 5.8% 5.1% 4.6%

この法則ですが、我々の会計の領域にも無縁なものではありません。
会計帳簿についても「自然発生的な数字の集合体」に該当すると仮定すると、この法則が成立することとなり、その最高位の値の分布は(表1)の値に近似する傾向を示すことになります。
ものは試しです。システムのテストのために経理部から入手した弊社の2010年6月期の仕訳データ(約12,000件)の金額部分について、実際に最高位の値の出現率を調べてみました。結果は(表2)のとおりです。

(表2)DIVA社の仕訳データに見られる最高位の値への出現率

最高位の値 1 2 3 4 5 6 7 8 9
出現率 31.2% 17.8% 11.5% 10.5% 8.5% 6.9% 5.5% 4.4% 3.8%
期待確率 30.1% 17.6% 12.5% 9.7% 7.9% 6.7% 5.8% 5.1% 4.6%

最大1%程度の乖離はありますが、傾向としては「会計帳簿は自然発生的な数字の集合体に該当し、ベンフォードの法則が成立する」と言えそうです。
これは逆に言えば、この値に近似しない場合は会計帳簿の数字の中に自然発生的でない「人為的な操作」が多数含まれている可能性がある、つまりは不正会計の可能性があると考えることもできるということになるかと思います。
実際、この法則を用いて不正会計の可能性を探るという手法は存在し、いわゆるデータ監査ツールにはこの分析を行うための「ベンフォード分析機能」が含まれていることが多いようです。

さて、ここで「連結」視点での、この分析の用途を考えてみます。
すぐに思いつくのがグループ会社の不正会計の可能性の検知ではないでしょうか?
連結子会社の1従業員の不正であったとしても、連結グループ全体としての社会的責任が求められるものであり、過去の例を見ても、連結子会社で不正会計があった場合に、新聞報道等では親会社の名前が大々的に取り上げられるケースがほとんどです。
こういったことを踏まえると、例えば親会社の内部監査を実施される方が、このような分析手法を用いることによって、能動的かつ効率的にグループ会社の不正会計の可能性を検知するということは現実的に考えてもよいものではないでしょうか?

「では、実際にこれをやってみよう」という場合に問題になるのが必要となるグループ会社の財務データの入手です。分析を行うためにはその基礎となるデータの入手が必要ですが、グループ会社のデータとなると親会社からは容易に直接アクセスできないことが多いことでしょう。
連結決算システムでは親会社に子会社の財務データが集中化されているため、このデータを用いることが考えられますが、残念ながら限界があります。連結決算システムでは連結決算に必要な情報のみを子会社から収集することが多く、残高ベースでサマリしたデータのみを収集するケースが一般的です。
これではさすがに検体数が十分ではなく、期待確率に収斂しにくいことが直感的に想像できます。実際、弊社の2010年6月期の、今度は財務諸表データ(B/S,P/Lのみ:81件)の金額部分について分析を行ってみましたが、(表3)のようにベンフォードの法則とは異なる傾向を示す結果となりました。

(表3)DIVA社の財務諸表データに見られる最高位の値への出現率

最高位の値 1 2 3 4 5 6 7 8 9
出現率 30.9% 14.8% 12.3% 3.7% 12.3% 9.9% 3.7% 4.9% 7.4%
期待確率 30.1% 17.6% 12.5% 9.7% 7.9% 6.7% 5.8% 5.1% 4.6%

やはり、このような分析手法を用いようと考えると、残高ベースのサマリ情報では十分ではなく、仕訳データや補助簿データといった詳細な明細レベルの情報を入手することが必要なのです。さらに言えば、仮に不正の可能性を検知した対象に対して、追加的に詳細な分析・調査を行おうと考えた場合に、このような詳細情報は必ず必要となることでしょう。

実は、この収集する情報の粒度の問題は今回の件だけでなく、連結決算システムを経営管理目的など制度決算以外の用途にも活用しようと考えた場合にしばしば直面する「連結決算システムにとっての壁」であります。
弊社ではこの壁を乗り越えるべく、子会社のすべての仕訳データおよび必要な補助簿データを親会社に集中化する”統合会計ソリューション”を2011年1月より提供開始しており、ちょうどこのGW期間中にさらなる機能強化を行った最新バージョンをリリースします。

話を戻しますと、この統合会計ソリューションで親会社に集中化されたデータが前述の分析目的にも利用できるのではないでしょうか?このデータをデータ監査ツール等と組み合わせて利用することにより、精度の高いベンフォード分析はもちろん、売掛債権の年齢調べであったり、赤伝票の数の妥当性確認であったり、様々な分析が可能となるのではないかと思われます。

統合会計ソリューションは、経理部門の方々からはIFRS対応のインフラとして、経営管理部門の方々からは経営管理のためのデータマートとして、異なる部門に異なる2つの顔でご評価を頂いており、すでに来月以降、数社のお客様で導入が開始されることが決定しています。
今回、「このソリューションは使い方によっては内部監査部門の方々にも貢献できる場面があるのではないだろうか?」という思いから、「さらに自分たちが想像していないような場所でも貢献できる可能性を秘めているのではないだろうか?」という思いが生じ、筆をとりました。
実際にそのようなお声を頂いた場合に、きちんとその業務領域でも貢献できるよう、引き続きソリューションのブラッシュアップに尽力して参ります。

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