2011.05.11

第122回 (A) IFRS稟議はなぜ通るのか?【経営・会計最前線】

執行役員 第三事業本部長 公認会計士 岩佐 泰次

昨年度末において、今年度予算として多くのIFRSに関連した稟議がなされたように感じています。ただその実態は本当にIFRS対応なのかどうかというと、少し趣は異なるようにも感じています。そういった中、”IFRS稟議はなぜなぜ通るのか?”ということについて少し考えてみたいと思います。

IFRS稟議が通る背景には、リーマンショック以降投資が控えられてきた中で、その反動によるものという側面はあると思いますが、ここではIFRS稟議の実質的内容と稟議承認側の意識面とのバランスから考えてみたいと思います。

まず今回のIFRS稟議の内容についてです。
本当にIFRSや日本基準コンバージェンスへの対応のための稟議もありますが、経理財務系部門がこれまでやりたくてもできなかった制度決算や経営管理の強化などの対応を、IFRSという名を借りて申請しているケースも多いように感じています。今後10年・20年のスパンで見れば、IFRSは経理財務系の話としては最も大きなイベントで、これを逃すと当面は大きな投資稟議はしづらい状況になることを想定し、思い切った投資稟議がなされているケースがあるのだと感じています。例えばグループで統合GLを構築することや、グループの各種経営情報を格納する連結DWHを構築することなどもIFRS名目で投資稟議されていますが、よくよく考えればIFRS対応とは直接関係ないとも言えます。

他方、稟議承認する側の意識についても考えてみたいと思います。
稟議承認の本質は会社の成長等に向けたリスクテイクが基本であると思いますが、一方で現実の稟議承認段階で行われているのはリスクテイクというよりリスクヘッジに偏っているケースもよく聞きます。
こういった現状に対して、IFRS稟議がどう映ったかというと、明確にどちらと言えるケースは少ないように感じています。リスクテイクしているケースはもちろんあります。IFRS自体流動的な要素が大きい中、現場の強い変革・改善という意識に対して、経営サイドとしても会社成長等に向けたリスクテイク(投資としての承認)としてGOサインを出しているケースです。
ただ逆に同じGOサインを出している場合でも、まだ見ぬIFRSという漠とした状況・流れに対してリスクヘッジ(コストとしての承認)の意味合いにしかなっていないケースもあるように感じています。IFRSとは捉え方によって投資ともコストとも言える点、これまでの単なる制度対応とは趣を異にしているものだと感じています。

こう見てみると、IFRS稟議は制度対応的な内容であれば制度対応がゆえに通りやすく、また制度対応とは言えないケースであっても、経理財務系部門の前向きな投資稟議に対して経営サイドとしてもリスクテイク・リスクヘッジ問わず承認しがちな傾向にあると言えます。

ではそもそもなぜ経理財務系部門から前向きな投資稟議がこれだけあがっているのでしょうか?
当社に関連する投資稟議で見てみれば、いずれも連結視点での経営管理の強化ということが共通した狙いになっています。ここには2000年に開示面で連結中心になったもの(義務として最低限の連結)が、10年たってようやく前向きな連結に変化しようとしている背景もあるのだと思います。ビジネスの比重も海外へ大きくシフトしていく中、「義務として最低限」などと言っている状況ではありません。そういった中、IFRSを機に改めてグループの現状を評価し、少しでも理想形に近付くべく前向きな取り組みがなされていることがIFRS稟議の本質なのではと感じています。

10年たってようやく真の連結時代が到来したことが、IFRS稟議が通る本質なのかもしれません。

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