2011.08.17

第128回 (B) ネコタコ(Octocat)を生み出す探査中心の進化論【ものづくりの視点】

DIVA AMERICA CEO 中村 研二

皆さんはツイッターのマスコットである、青い鳥をみかけたことはあるでしょうか?あの鳥は、福岡在住の英国人デザイナー、Simon Oxley(サイモン・オクスリー)氏によるものだそうです。そして、彼のイラストは、もう一つ有名なサイト、GitHub(ギットハブ)でも採用されています。それは、Octocat(Octopus + Cat、つまり「ネコタコ」)と呼ばれる、奇妙だけれど可愛い、(今風にいえば「キモカワイイ」?)マスコットです。今回はこのOctocatを手がかりに、DIVA AMERICAの活動をご紹介したいと思います。

GitHubをご紹介する前に、まずはgitについてお話をしたいと思います。git(ギット、英国の俗語で「まぬけ」の意)は、オープンソースのOS、Linux(リナックス)の開発を統括しているLinus Torvals(リーナス・トーバルズ)氏が、リナックスのソースコードを管理するために開発したプログラムです。以前はBitKeeperという商用のソースコード管理システムを使用していたリナックスですが、ライセンス問題で揉めたために、トーバルズ氏本人が開発にのりだしました。リナックスは何千人という世界中にいる開発者が絶え間なく改良や拡張を続け、トーバルズ氏を含むごく少数のメンバーが取捨選択をし、標準版として取り込むという開発モデルになっています。トーバルズ氏はリナックスの開発を活性化するために、gitにいくつかの画期的なアイデアを取り入れました。

その中でも最も重要なアイデアは、ソースコードのリポジトリ(格納庫)が複数存在することを前提とした分散モデルをとっていることです。従来のソースコード管理システムは、正式版は中央のサーバーにひとつだけ存在するのが前提でした。分散モデルを採用することで、インターネット接続が遅い場所でも、頻繁に更新を手元のリポジトリに行うことができる利点が生まれました。しかし、より画期的なのは、中央のリポジトリからだけではなく、他のメンバーが所有する、複数のリポジトリからもマージ(合流)させることができるようになったことです。つまり、1対nのハブスポークモデルから、n対(n-1)のメッシュモデルを構築できるようになったのです。そしてその分散モデルを支えるために、複製とマージが簡単に行えるように工夫されています。

このgitの特性を活かし、ソーシャルネットワーク的な機能を付加したのがGitHubです。GitHubはプロジェクトの複製を簡単に行えるWebインターフェースを持ち、活動記録、Wiki、ソースコードレビューなど様々な機能を提供することで、コラボレーションしながら開発をすすめる環境を提供しています。この基盤の上で、開発者は複製により既存のプログラムを壊す心配をすることなく、様々なアイデアをコーディングし、ディスカッションしながら洗練させることができます。そして、優れた変更点は大元のソースコードに取り込まれ、ソフトウェアを多数の開発者の下で進化させることができるのです。

先日、「複雑系組織論」(ロバート・アクセルロッド著 ダイヤモンド社)という本を入手しました。著者は「囚人のジレンマ」で有名なゲーム理論の大家です。著者は複雑な組織を御し、進化させていくためのアプローチとして、産業革命以降の機械や工場生産に例えられる、正しく効率的な方法を画一的に適用することで進化を遂げてきた中央集権的な方法だけでなく、インターネットに象徴される、分散協調型のパラダイムに基づいた探査中心のアプローチを取り入れるべきと主張しています。探査中心アプローチとは、生物の世代交代による進化にみられる複製と突然変異、種族間の争いのような相互作用と淘汰を進化の源泉力とする考え方のことです。その一例としてリナックスの開発手法が書中でとりあげられていますが、GitHubのマスコットであるOctocatはまさに探査中心アプローチがもたらす進化の象徴ではないでしょうか。

探査中心アプローチは、DIVA AMERICAがあるシリコンバレーにおける企業活動を連想させます。ここでは数多くのスタートアップ企業が、ベンチャーキャピタルから受けた数億円の資金を1つのアイデアの実現に注ぎ込んでいます。2009年の米国におけるソフトウェアスタートアップ企業への投資は約32億ドル(約2500億円)で、その76%が収入やキャッシュフローが安定する前の、創業期から拡大期までのスタートアップ企業に投資されています。創業者の多くは、同業の大企業での開発経験を持ち、アイデアを実現するために離職し、自らビジネスを立ち上げた人たちです。ここにgitと同様の、複製や突然変異のモチーフがみられます。筆者はこの探査中心のアプローチがシリコンバレーをソフトウェアにおける技術革新のるつぼにしている鍵だと考えています。DIVA AMERICAはこれらのスタートアップ企業と連携し、日本の企業文化に探査中心アプローチをもたらす接点として活動することを使命と考えています。

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