2011.09.28

第131回 (A) IFRSは不要か?【経営・会計最前線】

業務推進本部 管理部長 守田 浩之

金融担当大臣のIFRS強制適用のロードマップ見直し発言に揺戻し感、再考の機運が強くなったIFRSは、本当に延期でよいのか、国際企業にしか必要ないものなのか。変化する会計環境について考えてみた。

2005年の欧州の国際会計基準(IFRSs:国際財務報告基準)への移行に端を発し、その後の2007年(同等性評価)問題からコンバージェンス、アドプションへと一気に会計の国際統一化の流れへと傾いたように見えた(日本も2012年度にIFRS適用のロードマップを示すとの公式発表がされ一気にIFRSブーム(?)が起こった)。ところが、先の大臣発言の一言で、会計の国際化(IFRS)への流れに急ブレーキがかかったようだが、本当にIFRSにブレーキをかけてもよいものか。IFRSは国際企業にしか必要ないのかとの思いも生じる。

会計に携わる者として、最近の会計環境の変化(コンバージェンス)でさえ対応に苦慮している現実を考えれば急速なIFRSへの流れへのブレーキは歓迎したいところであり、コンバージェンスへの対応で会計の国際化は(同等性の確保で)十分でないかと思うのも本心であるが、2000年の会計ビッグ・バンによる連結中心の開示(財務報告)制度の実施時期に、奇しくも日本の財務諸表の信頼性が不十分であるとの「警告」が監査報告書に記載されなければいけない事態となったことが思い出され、日本の会計制度(企業会計の目的)の国際化への遅れを如実に示した過去の事実と、これに伴うジャパン・プレミアムなどの発生を招いたことも頭をよぎる。

一方、IFRSは現在、IASBとFASBの綱引きの様相を呈していると思えるが、どちらの側によっても、そもそも利益概念がこれまでの日本基準、「純利益」から変化しており、制度会計の目的が会計の国際化とともに変化している現実をどう捉え、誰に何を報告し、どう伝えていくべきかの問題であると思える。そもそも会計の目的は、利益を計算することにあるが、この「利益」が誰のために報告されるかで会計の区分・名称(制度会計=財務会計、管理会計、特殊原価計算等)も変わり、算定手法・過程も変わってくる。今までの日本の制度会計基準とIFRS、FASBとの相違も、極端に言えばこれと同じ問題であると考えることができる。

これまでの日本の制度会計による利益は、実現利益を重視し、処分可能利益を算定し、利害調整機能を目的としてきた(株主、債権者、企業当事者)が、欧米の制度会計は投資家への情報提供機能を第一義に、目的適合性を重視しており、企業活動による成果とともに、保有資産・負債の経済環境による変化も取込んだ企業価値変化を財務報告の主眼に置いている。日本の会計基準も連結ベースの開示中心への転換から最近のコンバージェンスにより欧米とその目的を一にしてきているがフレームワークの定義までには至っておらず、その目的が必ずしも明瞭となっているとは言えない。

しかし、経済活動では会計に先行して、代表的な日本企業が製造・流通を通して国際化を実現し、その地位を築き、全世界で活躍する現在では、このままIFRSを議論の片隅においやっては、結局のところ日本の経済活動を支える企業の存在感を埋没させる結果となり、企業のインフラ(会計)の国際化を意識、対応せずには日本経済の成長、産業の空洞化、日本の金融市場の相対的な衰退を避けることができなくなるのではないかという憂いを感じる。これは、国内を活動の舞台とする企業においても日本が世界の経済環境、市場に影響を受ける限り他人ごとではすまない。

ソニーが米国での資金調達、上場を果たしてから約半世紀、その後も日本を代表する企業がSEC基準の財務報告をおこない、日本企業の存在、国際化を主張・主導してきた歴史をみても、IFRS議論を簡単に会計だけの国際化問題と埋もれさせて良いものだろうかと感じ、アドプションまたはコンバージェンス、連結先行または連単分離(これはあり得ないと思うが。)というIFRSの導入の仕方は別として、IFRS問題による会計の国際化を通じて、現在の日本における「Think Global」を自分自身の頭でも考えてみたいと思う。

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