2011.12.07

第136回 (A) 多次元宇宙物理学に馳せる、経営会計に求める姿 【経営・会計最前線】

第三事業本部 ビジネスソリューション部 シニアマネージャー 泉澤 渉

激変の2011年も気が付けば残り1ヶ月となりました。夜空を見上げると、そこには他の星々を従えて一層強く光り輝く冬の大三角形とオリオン座が見えます。
大三角形の1つ、赤き巨星ベテルギウスが、来年2012年に超新星爆発を起こし星の最期を迎えるとの見解を、オーストラリア・クィーンズランド大学のブラッド・カーター博士が予言しました。
直径は太陽の1000倍、地球から640光年の距離という、天文学規模ではかなり「近所」にあたるそうですが、それでも来年爆発が目視できたとすると、それは640年前に起きた爆発の残影をようやく我々が目にしているということです。
恒星の中心核では、核融合反応により膨大なエネルギーが生み出され、水素からヘリウムへと原子が置き換わっていきますが、私達生きとし生けるものの体を形作る元素のうち、ケイ素や鉄などは、太陽よりはるかに巨大な恒星の中でのみ生成され、これらの星々の超新星爆発によって太陽系にやってきました。日常からは想像できない、桁違いにスケールの大きな自然現象がこの宇宙で繰り返されているのですが、私達の体も、まさに星のかけらでできており、空の彼方と生命との繋がりに感慨が深まるばかりです。

宇宙の年齢は138億歳、1000億個を超える銀河の存在など、自然科学の発展によって、我々の目視の敵わない世界の多くが解明されつつあります。1543年にコペルニクスが天動説を否定し、地球が回っていることを予言し、ガリレオが1609年に実証。そして1687年のニュートンの万有引力・運動の法則の発見により、天体の運動や太陽系の全容が明らかになりました。
アインシュタインは、ニュートンの万有引力が真理だとすると、光の速さが説明できないと否定し、時間も空間も絶対的不変のものではないとの理論、特殊相対性理論を1905年に導き、やがてはニュートンの力学すらも包含する一般相対性理論を1915年に発見することとなります。
彼らの発見は、我々人間が地球で体感している「常識」は、宇宙の中でも非常に珍しい、ある特別な条件を与えられた環境に映し出されたものであり、我々の常識で現実の世界を捉えることの問題を指摘したものと言えます。

これらの取り組みは、既知の常識、枠組みでは説明できない自然現象を問い直し、帰納法的に枠組みを拡張し置き換え、そこに観測情報を当てはめることで、太陽系の発見や、海王星の発見、恒星の原理、ブラックホールやダークエネルギー、そして宇宙の成り立ちと未来を演繹的に予言、実証するにまで至り、これらはX線撮影や核エネルギーなどの科学技術の発展に大きく寄与しています。

今やあらゆる物理現象は、大きく4つの力(重力、電磁気力、弱い核力、強い核力)に分類され、この4つを統合する取り組みとして、超ひも理論や膜理論が提唱されています。全ての物理現象は、この世界が11次元で成り立っているとすれば、数学的にも統合が可能とのことです。これらの研究の積み重ねが、いずれは私達にタイムトラベルや宇宙外への旅行の可能性などをもたらしてくれるかもしれません。

さて、自然科学の世界では超大統一理論への取り組みが進んでいますが、社会科学、とりわけ経営学の世界ではどうでしょうか。
企業や組織の成功事例から、帰納法的に理論を体系化させる取り組みは20世紀に入ってから活況となっていますが、有名なハーバード大学のM.ポーター教授の競争戦略理論も、10あると言われる学派、ポジショニング学派の1つにすぎません。彼の理論では説明のできない様々な企業の成功例を裏付けるために、ラーニング学派やカルチャー学派などが生み出され論争を生んでいます。
私の所感としては、これらの論争は、企業活動という多次元的な営みを、色々な角度からスクリーンに投影した「影の形の違い」を議論しているのであって、本来重要なことはこれらの影から、企業活動をどのように動的に捉え、未来に対しての”意志”決定を行なうかにあると考えます。
会計も社会科学の1つとして捉えると、企業活動に対して光を当て、ある面に投影された影をカネという物差しで計測しているものだと考えられます。IFRSに代表される会計基準の変更も、目的やニーズに合わせてレントゲンの投影面を変えたものとイメージすることができます。そして経営会計とは、これらをレントゲンのような影のみならず、CTやMRIのように立体的に、動的に、網羅的にあぶり出せるものでなければなりません。

経営や情報システムの世界でも、多次元モデルの有効性が唱えられていますが、大切なのはいたずらに次元や箱の大きさを増やすことではなく、必要かつ十分な粒度で様々な現象や活動を単純化させ、置き換えることにあります。
細かな各論、影の端々に縛られることなく、大局から企業内外の営みを捉え、合理的な”意志”決定を後押しできるもの。それは各企業の業態や成長ステージ、内部・外部環境や企業文化によっても異なるべきものです。

私達は、我々が極めて高度な数学の知識が無くとも大宇宙へ思いを馳せ自然科学の効果を享受できるのと同じように、困難な設計や莫大な情報システムへの投資が無くとも、多様な企業活動の実態と未来を手に取ることができる、まさに「経営情報の大衆化」を目指した経営会計の実現を、形あるものとして取り組んでいきたいと思います。

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