第148回 (A) “ストーリー” のある寿司屋【経営・会計最前線】
第三事業本部 ビジネスソリューション部 シニアマネージャー 佐藤 直樹
私の自宅の近くには、週末になるたびに大行列ができる寿司屋が多数あります。その中でも際立ってにぎわっているのが回転すしチェーンの「○○ロー」です。
1年ばかり前から、数回訪れていますが、初めて行った時には、コストパフォーマンスの良さに驚かされました。回転すしという業態を考えると、十分に満足できるものでした。また、店員の対応も感じが良く、教育にもコストをかけている様子が想像でき、「どういう仕組みで会社を回しているのだろう」と大変興味をひかれていたところ、日経ビジネスの2011年12月12日号で、以下の様に明らかにされていました。
<回転すしチェーン 「○○ロー」 の仕組み>
▼ 品質にはコストをかける
- 品質の良さはネタの良さ、原価率の高さは同業他社を圧倒
- 外食チェーンではコストカットのためセントラルキッチン方式が一般的だが、各店舗で鮮魚のカット/シャリ炊きを実施
▼ 無駄は最小限に抑えてコストを下げる
- 「回転すし総合管理システム」導入により店内の状況を常に観察/予測し、食材のロスを最低限に抑えて店舗全体としては低コストを実現
※ 詳細にご興味ある方は、雑誌記事をご覧ください
このメールマガジンのタイトルは、お察しの通り、昨今のベストセラーである『ストーリーとしての競争戦略』をもじったものですが、上述の回転すしチェーンにも正に成功のストーリーが隠されていました。また、最近、お客様と接していても、「業績が安定している会社ほど、経理部をはじめとした管理部門が、やはり “ストーリー” を持って行動していることが多い」と感じています。
実のところ、現在、私が参加している、某商社の予算策定システム導入プロジェクトでも、同じようなことを感じていますので、少しご紹介したいと思います。
<某商社 予算策定システム導入プロジェクト概要>
▼ 現状の要約 → 集計作業だけで手いっぱい
- 子会社約20社/売上は約1,500億円、この規模の多くの会社と同様、予算はExcelで作成
- 共通経費の配賦に時間がかかり、事業部損益の算出にまで、なかなかたどりつかない
- 各部門が同時並行作業のため、提出されてきたものを集計するだけで終わっており、全体の整合性を考慮した上での予算の見直しに十分な時間がとれない
▼ あるべき理想像 → 集計作業のスピードアップにより、十分に練られた予算の作成を可能にする
- 次期の組織編成が決まった時点で、共通経費を配賦し、まずは各事業部の経費予算を決定
- その経費予算をベースにして、事業部にその経費を上回るための施策を検討してもらった上で、売上/受注計画を提出してもらう
- 予算の集計よりも検討に時間を割くことで、十分に練られた実行性のある予算を作成
この会社の役員の方は、「システム導入で予算集計の圧倒的なスピードアップを実現し、今までと経営スタイルを変えていく」と意気込んでおられ、その目標を実現すべく、予算策定のあるべき “ストーリー” を弊社も一緒になって検討を進めています。
プロジェクトが終わった時に、どのようなストーリーが出来上がっているか・・・。私自身もそれを楽しみに、このプロジェクトに参加しています。