2012.06.20

第149回 (A) 失われた10年、失われた20年、誰がなにを失ったのか? 【経営・会計最前線】

第二事業本部 ビジネスソリューション部 マネージャー 中尾 誠

先日入社2年目のS君24歳と外出しているときに、自分は生まれてから、バブル経済も破綻していて、景気もずっと悪いまま、「失われた20年」を過ごしてきましたと言っているのを聞いて思いました。
「失われた10年、失われた20年、一体、誰が、何を失ったのか?」

日本全体の景気が悪いことや日本の会社の業績が悪い時に、不景気の象徴的な言い回しとして、この「失われた10年」もしくは「失われた20年」という言葉が使われているのをよく耳にしたり新聞や雑誌で見たりします。しかし具体的に「失われた」ものが何であり、誰がそれを失ったのか問われてみると、正直私個人としてははっきりと答えられません。

何となく、不景気の状態を説明するために使っている言葉だとは判りますが、具体的な内容を知らないまま、その場の雰囲気で、便利な言葉として、適当に使われているような気がしたので、ウィキペディアで調べてみたところ以下の記載がありました。

「失われた10年(うしなわれたじゅうねん、英: the lost decade)は、ある国、あるいは地域の経済が約10年以上の長期にわたって不況と停滞に襲われた時代を指す語である。」「1991年3月から始まった『失われた10年』(平成不況)は、バブル崩壊に始まり、1993年末頃から1997年前半頃まで、景気回復の為のカンフル剤注入政策や、その後のアジア金融危機、1999年から新世紀にかけてのITバブルとその崩壊を経て、小泉構造改革によって2002年1月を底とした外需先導での景気回復により終結した。」

一方、「失われた20年」については、以下の様に記載されています。
「失われた20年(うしなわれたにじゅうねん)は、主に日本においてバブル景気崩壊後の約20年以上にわたる経済が低迷した期間を指す。」
「1990年ごろから景気が後退し、バブル経済も崩壊。それによって消費や雇用に悪影響を及ぼし、デフレになった。かつては、そのような状況であった1990年代から2000年代初頭までの経済を「失われた10年」(平成不況)と呼んでいたが、2008年の世界金融危機(リーマン・ショック)が発生し、経済の低迷が改善に向かわなかったため、失われた10年といざなみ景気の期間を含めた2000年代以降の経済とを合わせて「失われた20年」と呼ばれるようになった。」

これらの記述を読むと、何れの言葉も日本経済が長期間停滞していることを指していることは判ります。けれども、日本経済が長期間停滞していることで、肝腎の何を失っているのかは良く判りません。
バブル経済のさなか、バブル経済以降も経済成長を続けることが約束されていた前提だったのであれば、この「失われた10年」もしくは「失われた20年」という表現はしっくりくると思いますが、いつの時代もある国の経済が永遠に成長し続けることを約束することなどできません。

バブル経済以前の日本経済は、長期間右肩上がりの成長を続けてきましたが、たまたま、結果的に経済成長を続けられてきただけのことであり、持続的な成長が約束される前提などは元々ありませんでした。ところが、経済成長を長期間にわたって達成してきたがために、あたかも持続的成長が約束される前提が成立しているような過信や錯覚を抱き、その過信や錯覚をもとにした経済的な仕組みがある程度整備されてしまったと思います。
そのような状態のところに、長期間の不況がきたので、経済成長することが約束される前提が成立しなくなり、従来の過信や錯覚が信じられない状態になりました。
従って「失われた10年」もしくは「失われた20年」で誰がなにを失ったかということに関しては、日本経済の成長が約束される前提が成立しているような過信や錯覚を信じられなくなって、その結果(日本という国?日本人?)が自信を失ったのではないかと解釈されます。

最後に、このような過信や錯覚を前提にして得られた自信を回復できるかというと、元の状況まで回復させるのはなかなか難しく、あくまで失われる前の時点を基準にすると「失われた」状態はこのまま続いていくかと思われます。もっとも、厄介なのは現在の経済的な仕組みが間違った前提下で出来上がっているので、この修正や解体にはかなりの混乱も出ると思われます。
ここは、経済成長することが約束される前提という、元より無理のある前提が成立すると過信・錯覚してしまっていた状態だったので、実質的に失ったものはなく、このような幻想を早く忘れて、経済成長が過去のように続くことが難しい現状がある意味正常な状態として受け止めて対応するしかないと考えます。

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