2012.08.22

第153回 (A) 収穫加速の法則に思う【ディーバ哲学】

取締役財務担当 春日 尚義

先日、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」(Back to the Future)という今から28年ほど前に製作されたSF映画のDVDを実に10数年振りに観る機会がありました。前職で海外出張に行った際に、買い求めたものだったと記憶していますが、正直、購入した筈の私でさえ、買っていたことすら忘れておりました。たまたま、夏休みに入った長男が、珍しく自室の片づけをしていたところ、本棚に突っ込まれていたパッケージを見つけた様です。因みに、この映画は3作品からなるシリーズもので、スティーブン・スピルバーグが製作面で総指揮にあたり、後に「フォレストガンプ(Forrest Gump)」でアカデミー監督賞を受賞したロバート・ゼメキス監督を一躍有名にした作品でもあります。私は特に好んで映画を鑑賞する人間ではありませんが、この映画は初回上映時の話題性が強く、読者の中にも映画館に足を運ばれた方がいるかも知れません。


第1作目では、負け組人生を送る父親を持つ主人公の高校生が、或る事件がきっかけでタイムマシンに乗り込んだことで、30年前にタイムスリップしてしまい、そこで高校生の父親に遭遇します。父親は当時から冴えない存在で、主人公はあれこれ策を尽くして父親に自信を持たせます。30年後に戻ると父親が見違えるほど活力に溢れ、成功した人間になっているという内容で、ストーリーからすると、この作品が一番面白いのではないかと感じています。一方、SF映画としての面白さは、2作目に軍配が上がるのではないかと思います。
2作目で主人公は、30年後にあたる2015年の世界を訪れることになります。10数年振りに改めて観ると、そこで取り上げられている文明の機器、例えばTV電話が既に現実に利用されていることなど、その予見が的中していることに驚く一方で、SF映画の世界を僅か30年弱で実現してしまった科学技術の長足な進歩に改めて感心しました。


レイ・カーツワイルという米国の発明家が提唱した収穫加速の法則(The Law of Accelerating Returns)なる考えが正しいとすれば、これは特に驚くに値しないことなのかも知れません。同氏の主張する収穫加速の法則とは「ひとつの重要な発明は他の発明と結びつき、次の重要な発明の登場までの期間を短縮し、科学技術が直線グラフ的ではなく指数関数的に進歩するという考えらしいのですが、Internetが普及して以降、次々と上市される通信機器を見る限り、科学技術は指数関数的に進歩しているという気がします。一方、カーツワイル氏は、人類の技術開発の歴史から未来のモデルを推測することには限界があり(この限界を技術的特異点と呼ぶらしいのですが)、比較的、近未来にその限界を超える可能性があることも述べています。また、限界を超えた後において、科学技術の進歩を支配するのはもはや人類ではなく、人工知能やサイボーグなどのポストヒューマンであり、早ければ2020年代、遅くとも2050年頃にはその様な時が訪れると、大胆かつ衝撃的な予測もしています。確かにこのままの勢いで技術革新が進むと、能力の面ではコンピューターが人間を上回ることになるでしょう。前回のメルマガでもワトソンの事例が紹介されていた様に(詳しくはこちら)、或る領域においては、既にコンピューターが人間を凌駕していると述べても過言ではないでしょう。


しかし、アナログ人間の私は、人間にはコンピューターにはどうしても真似のできない能力があることを信じています。データに基づいて客観的に判断を行う役割を担う私が申すのも何ですが、それは、データに加え、魂や情熱といった気持ちを注入できる能力ではないだろうかと感じています。これまでの自らの経験に基づけば、この極めて人間臭い行為に頼る余り、時に判断を誤ったこともありますが、データだけでは説明しきれない不思議な力が生じ、不可能が可能になったこともあります。

例えば、或る投資案件を取り進めるかどうかについて、提案がなされたとしましょう。データの上では、その案件が成立する様に見えても案件に取り組むのは生身の人間ですから、当事者の情熱や思い入れが感じられない限りは、やはり取り組んではならない案件ではないかと思います。当社の場合、これまでは高収益体質への回帰を図ることを優先に投資活動を抑えてきた事情があり、「熱い提案」を聞く機会が余りありませんでしたが、今後は、一度や二度のやり直しを恐れず、果敢に挑戦するメンバが増えることを期待しています。

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