2012.09.19

第155回 (A) 自分でやった方が早い病【経営・会計最前線】

ビジネスソリューション本部 コンサルティングサービス1部 部長 山崎 恒

『自分でやった方が早い病』 これは先日、上司より紹介され、タイトルを聞いただけで思わず購入してしまった新書のタイトルです。本書は組織におけるマネジャー向けの内容となっており、「まわりの人への任せ方がわからない」「いい仕事があがってこないから任せたくない」「教える時間がないから自分でやる」…。これらを「自分でやった方が早い」という病ととらえ、仕事ができるつもりでいても、成長がストップし、いつの間にか孤立してしまうばかりでなく、「会社やチームとしての損失」を招く恐ろしい病と紹介しています。

このような考え方はマネジャーとしての基本である一方、頭では理解しているがなかなか実践できない事項の一つかも知れません。社会人1年目の新人研修中に教わった中国の古典「授人以魚 不如授人以漁」(飢えている人に魚をとってあげれば一日は食べられるけれど、魚のとり方を教えれば彼は一生食べることができる)を思い出すとともに、改めて組織や周囲にとっての重要性を痛感し、自分自身深く反省させられる機会となりました。皆様ご自身や周囲にピンとくる方も多いのではないでしょうか。

ところで、この病を「自分」ではなく、「自社」へと置き換えて少し考えてみました。
経営・IT分野において用いられる『エコシステム』という言葉があります。本来は、生物とその環境の構成要素を1つのシステムとしてとらえる「生態系」を意味する科学用語ですが、経営・ITの分野では、複数の企業が商品開発や事業活動などでパートナーシップを組み、互いの技術や資本を生かしながら、開発業者・代理店・販売店・宣伝媒体、さらには消費者や社会を巻き込み、業界の枠や国境を超えて広く共存共栄していく仕組みとして認識されています。IT分野では早くから、マイクロソフトのWindowsなど基本のOSを軸に、デベロッパー、ベンダー、サードパーティー、ユーザーが有機的に結びつき、共に成長していくエコシステムの収益モデルが提唱され、実際に成果を上げてきた例が有名です。また最近では、Facebookのマーケティングガイドとしてエコシステムが紹介されているように、これまでのOSを頂点とする垂直的な関係から、ベンチャーや一般ユーザーも含めた水平的な協力関係を重視する方向へとシフトしつつあるとも言われています

冒頭の『自分でやった方が早い病』は個人および組織における課題ですが、自分を「自社」に、自分以外の対象としての部下を「パートナー企業」や「ユーザー」に、組織を「業界」に置き換えてみると、ある企業が『自社でやった方が早い病』の場合、その企業は業界から孤立してしまうばかりでなく、「業界としての損失」を招く、つまり「エコシステム」の発展を妨げる要因になるかも知れないと考えました。もしくはエコシステムの例を出すまでもなく、近江商人の経営哲学である「三方よし」に反することになるのかも知れません。

弊社は、連結会計分野を中心として、経理部/経営企画部等のエンドユーザー様向けに、各種ソフトウェア製品およびサービスをご提供する立場にありますが、実際には開発や営業/販売、サービスなど様々な分野で多くのパートナー企業様にご協力いただいているだけではなく、最近では特にエンドユーザー企業様の情報システム部門や情報システム子会社様などにもご協力いただくケースも増えてきています。また、ある企業に転職された連結決算担当者様が以前の職場で弊社製品(DivaSystem)を利用していたという関係で、新しい職場でも弊社製品をご紹介・ご導入いただくというケースも少なくありません。このように実際には多くの企業・個人にご協力いただき、助けていただきながら活動しているにも関わらず、弊社が何でも「自社でやる」という状態では「連結会計」業界の創造や発展・進歩を妨げてしまうかも知れないと感じました。
勿論、何事も誰かにすぐ頼ったり、お願いしたり、丸投げするのではなく、また自社の能力を高める段階である分野やコアとなる業務はしっかりと自社で対応する必要があるのですが、業務の内容やお客様にとっての価値などを良く考えた上で、適切な協力関係を築くことも重要だということではないでしょうか。

これからも、弊社では「連結会計」業界全体の発展や弊社の提唱する「連結経営会計(CPM)」ソリューションの成長を目指し、これまで以上にお客様にとっての最善の製品・サービスをご提供できるよう各方面に優良な協力関係を築きつつ、努力していきたいと思います。


参考文献
小倉 広「自分でやった方が早い病」星海社新書

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