2012.12.12

第161回 (B) 『パチンコガンダム駅』が出現してしまった原因は?【ディーバ哲学】

開発第一本部 品質設計管理部 部長 上地 浩

私事になりますが、1年ほど前より、趣味で自転車に乗っています。スポーツタイプの自転車です。平地をひたすら走ることをしています。最初の頃は10kmくらいでも疲れるような状態だったのですが、練習するうちにだんだんと長い距離を走れるようになりました。

自宅(町田市)近くに境川サイクリングロードがあるので、江の島方面によく行きます。距離にすると、往復で50kmほどです。時々、もう少し長い距離を走ります。初めて行くところは、地図を見ながら走ります。iPhoneのアプリで、地図上にGPSで現在地を表示してくれるものがあるので、それを使っています。地図だけでなく、走行距離や平均速度などメーター類も付いて非常に便利です。走行結果をFacebookにアップすることもできます。

先日、お休みの日にオフィスのある品川に向かって走ってみました。丁度、アップルがiOS6をリリースしたタイミングだったので、ダウンロードしてiPhone4にインストールしたところでした。走り始めて、地図アプリを起動したのですが、何かいつもと違うような気がしました。バージョンアップで新機能が追加されたのだろうと思って、あまり気にしませんでした。暫くは、よく通る道なので、地図を見なくても走れます。丁度、鶴見川サイクリングロードから離れて、多摩川を渡った辺りで、土地勘がほぼ無くなってしまいました。大体の方向はわかるものの、どの道を通ればよいのかわかりません。そういうときは、地図アプリの出番です。信号待ちをしている間に、地図を拡大してみます。いつもだと、どの道を通ればよいかはっきりとわかるのですが、その日は違いました。道路や目印になるようなものがよくわからないのです。結局、何度も道を間違えて、仕舞には地図を見ないでほとんど自分の勘だけで何とか品川まで辿り着きました。

ナビゲーションの役割の地図が使えないのは、非常に困ったことです。自宅に帰って調べてみると、どうやらiOS6の仕業の様です。インターネットで検索してみると、iOS6の地図に対して非難のコメントが沢山出ています。また、WEBニュースでは、『青梅線に「パチンコガンダム駅」、羽田空港内に大王製紙、…』というような、iOS6の地図の酷さが報道されています。
それらのニュースでは、『iOS6の地図の不具合』、『開発のエンジニアリング上の問題』と、アップルの品質管理上の問題が指摘されていました。担当している仕事のせいか、『品質』という言葉には、普通の人より少し敏感に反応してしまいます。この件に関して、『品質の問題』あるいは『開発プロセスの問題』という指摘がされていることに、なんとなく違和感を持ってしまいました。

確かに、iOS6の地図はとても使えたものではなく、品質に問題がある、ということに違いないと思います。ですが、今回の問題は、誰が見ても使えたものではないとわかるレベルのものです。起動して少し触っただけで、おかしいと思うはずのものです。テストが不足していて、不具合を発生させてしまったというレベルのものではないと思います。グーグルの地図から、アップル自前の地図に変更したというところが原因だといわれていますが、これは理由にはならないと思います。今まで使っていたユーザーからすると、非常に困ってしまう状況を作りだしている訳で、このレベルの完成度で製品をリリースすること自体が信じられないことです。会社として『これでよし』と判断してリリースいるところがおかしいと思うのです。

アップルもそれを認め、ティム・クックCEOが謝罪コメントをホームページに掲載しました。しかし、リリース前にアップル社内でこの問題をどのように認識して、どのような判断したのかが気になります。問題の大きさを正しく認識できなかったのでしょうか?ユーザーにどのような影響があるのかわからなかったのでしょうか?ちゃんと問題を把握できて、会社としてしっかりとした判断ができたのであれば、このような状態で製品をリリースするということはなかったと思います。リリースしたら大変なことになると気付いていた人はいた筈です。ただし、そのような問題を指摘することは非常に難しいことだともいえます。ソフトウェアのように人に大きく依存するもので、しかも、目に見えにくいものについては、いろいろな意味で、問題を指摘するのは難しいものになります。

アップルのように、アイデアを製品として世の中に出すことを得意としている会社が、別の面では、本当は大事にすべきところを忘れてしまっていたことを非常に残念に思います。何事もバランスが大切で、管理のための管理になってはいけないと思いますが、管理をするからといって、人間の創造性を失わせるものでもないとも思います。品質を向上させるには、現場レベルでの地道な活動を進めていくことは勿論ですが、それを意味あるものにする為に、会社として持つべき価値観や、それを担保するためのガバナンスとしての仕組みが重要ではないかと思います。

弊社も、製品を非常に多くのお客様にご利用いただいている立場として、その責任の重さを感じずにはいられません。

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