2013.05.29

第173回 (C) 連結管理会計「7つ道具」(2) 【本気で連結業績を向上するための経営管理】

執行役員 主席コンサルタント 森本 朋敦

●「7つ道具」その2:バラツキを知る
品質管理の基本は、製造オーダー単位での生産実績のバラツキを見て、なぜそんなにバラつくのか、不良率が高い製造オーダーでは一体何が起きていたのか、といったことを調査・分析して、改善策を立案し実行することです。1か月の平均不良率を見ているだけでは何らの改善アクションも打てません。
連結収益管理もこれと全く同じ話であって、連結収益を見るといっても、ただ連結財務諸表レベルを見ているだけでは、利益率が高いのか低いのかが分かる程度に過ぎません。事業別に見たところで、どの事業が儲かっているかということが分かるだけで、せいぜい事業別の評価に活用できる程度の話です。
例えば、下表のようにX事業の連結収益の内訳を製品別まで見た場合、明らかに様相が変わります。X事業の収益性の低さの主な原因となっている製品は、b、c、g、j、l、m、nであって、特に売上規模の大きさから製品b、gについて早急に手を打たないといけないことが分かります。のんびりした管理者でなければ、このデータを見れば特に事業部長に指示されなくても、営業は売価改訂ができないか検討するでしょうし、設計はVA,VEを行うでしょうし、生産技術はサイクルタイムの短縮方法を検討するはずです。
このように、単に連結収益の全体観を見るだけではなく、個別具体的なアクションを検討できるレベルまで管理単位を細分化することは、連結収益向上のために極めて重要です。某食品メーカーの統轄部長は、このことを「管理せずに改善する」(いちいち指示しなくても現場が勝手に改善活動を進めてくれる)とおっしゃっていました。

●バラツキを知ることから生まれるアクション
連結収益管理を行う単位を上記のようにアクションを打てるレベル、すなわち、「特定の属性がユニークであるレベル」まで細分化すれば、逆にその属性でデータを集約することによって、別の打ち手も見えてきます。
このことを精密機器の受託生産を行っている某社の簡単な実例でご紹介したいと思います。この会社は、元々は大手電機メーカーの完成品組立を賃加工で受けていたのですが、それだけでは事業が成長しないので、精密機器の受託生産や、そのための部品加工、さらに設計段階から顧客と共同作業を行うところまで事業を広げてきました。ところが収益性はかなり厳しく、3期連続赤字となっていました。
受注生産型事業のため、基本は製番管理となりますので、まず全製番について連結収益を把握するところから取組を開始しました。また、各製番にはユニークな属性を特定できますので、いくつかの切り口で収益性を分析することを行いました。そこで分かったことをいくつかご紹介します。 

  1. 賃加工、組立生産、部品加工から組立生産まで、共同設計からの一貫生産という4分類で収益性を比較すると、やはり当然のこととして、付加価値が高まるこの順番で収益性が高くなっていることが分かりました。
  2. もともと賃加工から始まっていますので、生産開始時点に全部品を揃える購買管理力が弱いのではないかという仮説と、生産現場を見ていると大型製品になると図面数が多くなって組立工が覚えきれずに動線が非効率になっているのではないかという仮説のもと、このマトリックスで収益性を分析しました。その結果が下表で、仮説通りの結果が出ました。

  3. ここまで分かると、この会社がやるべきことははっきりしており、

    • 賃加工は止めるか、売価値上げを交渉する(結果、大幅な売価Upに成功しました)
    • 設計機能を強化するとともに、部品点数=中、製品サイズ=中に集中する
    • ただ集中するだけでは事業規模が縮小するので、このゾーンを強化する。


    具体的には、共同設計からの一貫生産を受注しやすく、部品点数や製品サイズ特性を満たす顧客となると、第一には医療分析機器ベンチャー企業ということが分かり、順次営業活動を行っていきました。
    結果としては、3期連続赤字に陥っていた会社が、1年半で営業利益率5%程度まで収益性が向上しました。不採算事業から撤退しながら、売上高はむしろ微増となっています。 このように、収益管理単位を細分化し、バラツキを見る/見せることは、連結収益向上のために不可欠な経営情報インフラです。 

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