2013.06.26

第175回(C) 連結管理会計「7つ道具」(3) 【本気で連結業績を向上するための経営管理】

執行役員 主席コンサルタント 森本 朋敦

●「7つ道具」その3:視点を増やす
前回のコラムでは、管理単位を細分化してバラツキを見ることの重要性について考えましたが、収益情報を見る視点を増やすことによって、さらに多くのことが見えてきます。収益情報を見る視点を増やすというのは、管理会計的表現をすれば「収益管理軸を増やす」ということです。
下図は、製品軸(製品A、B)という収益管理軸に加えて、市場軸(日本、北米、アジア、豪州、EU、ロシア)という収益管理軸を加えてマトリクスで連結収益を表しています。これを見ると、同じ製品Aであっても市場別に収益性が異なることが分かります。アジアやEUでは収益性が低く、ロシアが一番収益性が高いことが分かります。台当り売上高でもロシアが一番高いことから、ロシアでの収益性の高さは売価が取れていること、すなわちブランド戦略がうまくいっていることや強力な競合が存在しないことが原因ではないかと推測されます。
また、北米は貢献利益率はほどほどですが、貢献利益に対して貢献キャッシュフローが著しく低いこと、すなわち製品在庫が積み上げってきていることが分かります。これは今後在庫を捌くためにプライスダウンやインセンティブの増加をしないといけなくなることを意味していますので、できるだけ将来収益の悪化を食い止めるため、早急に手を打たないといけないということが見て取れます。
このように、収益管理軸を増やすことによって、何が起こっているか、何がうまくいっているか、どこに手を打つべきかがより具体的に見えてくるわけです。


●効果的な収益管理軸を設定する

製品軸以外の収益管理の視点を増やすと言っても、いたずらに増やすだけでは労多くして益なしになってしまいますので、業種や事業特性、企業特性に応じて適切な収益管理軸を設定することが必要です。下図にいくつかの業種の例をあげていますが、ここでは自動車事業における市場軸での連結収益情報の重要性を紹介しておきます。
自動車業界ではまだ日本からの輸出が相応にあり、移転価格課税リスクを回避するためにAPA/TPA(取引価格の税務当局への事前確認制度)が採用され、これにより海外販社にある一定ルールでの利益が発生するような取引価格調整が行われます。従って、海外販社が自社の利益を最大化するように販売活動を行っても連結利益を最大化するような活動にはなりません。このため、海外販社が適切な販売活動を行うためには、当該販社が担当している市場別での製品別連結収益情報を提供することが必要になります。
また、市場毎に製品MIXや車の仕様、流通構造が異なりますので、グローバル戦略を担う本社としても市場別連結収益を把握することが必要になります。例えば、北米では相対的に大型車やピックアップトラックが好まれますし、フリートビジネス(レンタカー会社への大量販売。比較的収益性が低い)のウェートが結構ある上、日本とは異なり在庫販売であるなど、他の市場とは収益構造が異なります。その収益構造を把握しておかないと適切な市場戦略は立案できません。
さらに、販売時にインセンティブをつけるケースが多々ありますが、インセンティブを多額につけると残価率(中古車になった時の販売価格が新車価格に対してどの程度の比率になっているか)が悪化し、これは購入者にとっては保有価値が下がることになりますので、結局ブランドや将来販売力を毀損することになります。そのため、各市場での台当りインセンティブは市場収益管理上重要な管理指標となっています。

このように、事業特性、企業特性に応じて、製品軸以外の視点でも連結収益を見ていくことは、連結収益向上のために重要な要素となります。

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