2013.07.10

第176回 (C) 連連結管理会計「7つ道具」(4) 【本気で連結業績を向上するための経営管理】

会計事業本部長 森本 朋敦

●「7つ道具」その4:変化をタイムリーにつかむ
管理会計においては、実績を把握することはもちろん重要ですが、それが「いいのか悪いのか」を判断するために、予実対比など、予算(計画)や前年実績との対比が行われます。
しかしそれだけでは、「何が」良かったのか悪かったのかが分からないため、その差異を分析する必要があります。これを「差異要因分析」と言います。例えば、予算に対して営業利益で5億円悪化しているのは、為替影響なのか、数量減なのか、販売単価が悪化しているのか、原価が上昇しているのか、といった分析です。このような要因分析を行わないと、どこに手をつけるべきなのかが分からないため、業績改善のためのアクションに結び付きません。数量減であればもう一段の営業努力や新規顧客開拓を急がなければなりませんし、原価の悪化であれば購買や生産に一層のコストダウンを促さなければなりません。
下図の例では、ラジエーターの利益が16百万円悪化しており、差異要因分析としては、数量が著しく悪化しており、35百万円も利益を押し下げる要因になっていることが分かります。どの製品のどの要因が動いているのかが分かれば、アクションを打つべき対象が非常に明確になってくるわけです。
このような差異要因分析は、予実差異について行う場合は、予算に対して何が変動して業績が動いたのかを表しますが、その他の対比でも効果があります。前年実績との対比の場合は、前年と何が変わっているのかが分かりますし、前月との対比では、特に直近一カ月で急な変化を起こしているものはないかを把握することが容易になります。
また、このような分析を実績が締まってから何日もかけて手作業で行っていてはどんどんアクションが遅れてしまいますので、システム化により迅速に計算・報告することが望まれます。


●「7つ道具」その5:「それでどうなる」を考える

差異の要因まで分かってアクションを検討する場合、「結局それでどうなるのか」ということが経営者にとっては一番関心の高いテーマになると思います。このために「シミュレーション」が行われるわけです。
グローバルに活動している企業にとっては、中でも為替の動きは業績に大きな影響を与えますので、為替シミュレーションは必須になっていると思います。ただ、通常の連結決算では会社通貨レベルの情報しか集めていませんので、それだけではなかなか為替シミュレーションができません。例えば、タイの子会社は、会社通貨はバーツであっても、取引の多くは米ドルで行っているような場合、バーツが変動しなくても米ドルが変動すればバーツ建ての業績が変動し、連結業績に影響を与えるからです。従って、為替シミュレーションを高い精度で行おうとすると、各社から取引通貨別の取引金額情報を集めておく必要があります。
また、為替以外にシミュレーションの関心が特に高い項目は、やはり「数量」になると思います。数量変動は変動利益に圧倒的な影響を与えますので、数量変動が利益に与える影響シミュレーションは重要です。特に経営者からすると、需給調整を行っているのはいいが、それは儲けを増やす調整になっているのかという疑問が常に付きまといます。このような疑問にも応えられるようなインフラ作りがグローバル企業には必要になってきていると感じます。
さらに、販売価格変動や原材料価格変動の激しい業界においては、単価変動の収益影響シミュレーションも必要になってきますし、生産拠点をグローバルに展開している企業の場合は、固定費や生産拠点変更のシミュレーションといったことも必要かもしれません。

このように、単に業績を把握するだけではなく、その変動要因を分析してアクションを検討し、さらにその結果どうなりそうかを見極めるというところまで、どれだけ迅速に行えるかという、PDCAスピードは競争力の源泉の一つになってきています。そのためには、連結業績を把握するだけではなく、その変動要因である為替、数量、単価などの「原単位」となる情報まで把握することが求められます。もともと単体管理会計では当り前に行なっていたわけですから、連結経営の時代においては、やはり同じことを連結ベースでもできないといけないということです。

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