2013.10.02

第182回 (B) 製品原価を正しく把握するための連結原価計算【本気で連結業績を向上するための経営管理】

管理会計事業本部長 森本 朋敦

●完成品工場の製品原価では正しい判断ができない
会社をまたがって生産工程が流れている場合、最終製品を生産する工場の完成品原価を見ているだけでは正しい原価が分かりません。例えば、下図左側のような原価構造になっている場合、後工程のB国工場ではA国工場で生産された中間品をすべて原材料費として原価計算を行うため、完成品の原材料費率(変動費率)は65%となっています。しかし、連結ベースのグループ全体で考えると、A国工場は前工程、B国工場は後工程に過ぎず、これらを一貫して原価計算を行うと、本当は下図右側のように原材料費率(変動費率)35%が本当は正しい原価情報だということになります。

では、このように連結原価情報が分かればどのような変化が起きるでしょうか。下図のように、後工程工場の単体原価では変動費が高いので、かなり割高な価格を設定しないと利益が出ないように見えてしまいます。しかし、連結原価で考えると変動費はもっと低いということになり、実はもっと価格を下げれば販売数量も増え、利益が最大化できることが分かります。利益最大化の価格設定を行うためには、連結原価情報が不可欠なのです。

●連結原価を把握する方法
連結原価を把握するためには、大別すると二つの方法があります。
一つの方法は、連結BOM方式と言われる方法です。これは、前工程会社の原価構成表(原材料品目別単価・数量や加工費単価・工数など製品別原価内訳を保持した原価表)と後工程会社の原価構成表を結合する方法です。後工程会社が前工程会社から仕入れる中間品原価を前工程会社の原価構成表に置き換えることによって、連結ベースでの製品原価構成を把握するというやり方です。通常は、各社のBOMを月次なり半期なりで収集し、中間品をKEYとして連結原価に結合するため、連結BOM方式と呼ばれます。この方法は、台当り原価構成の変動を月次でトラッキング・分析するニーズが強い自動車業界などで比較的よく行われるやりかたです。この方法は、各社から収集するデータが比較的限定的であるために相対的に着手しやすく、連結原価構成単価を保持するので原料価格や数量の変動シミュレーションを行いやすいというメリットがあります。一方、月末日などの或る時点のBOMを切り取った情報を収集してくるため、完全には実態を反映できず計算精度にはやや難があります。原料品質等との兼ね合いで製造条件、配合割合が都度変わることがある化学業界や食品業界では適用できない場合もあります。また、前工程が生産停止などをしていると、前工程会社側の情報を入手できず計算できないというケースも生じえます。
もう一つの方法は、転がし連結原価計算方式と言われる方法です。これは、各社があたかも一つの工場の中の工程であるかのように、会社を跨って原価計算を転がしていく方法です。計算量が膨大になりますので、従来のITではコスト面や処理速度面で実現が難しかった方法ですが、今ではITの進歩により、十分に実現可能な方法になりました。この方法では、通常の原価計算と同様に受払情報や投入工数などの生産実績を収集して計算しますので、精度の高い連結原価が算出できます。その反面として、受払実績や生産実績を各製造拠点から収集してくる必要がありますので、製造拠点側の対応が不可欠になります。また、品目数が多いと計算量が膨大になりますので、高速処理エンジンが必要になってきます。

このように、生産のグローバル化にともなって連結原価の必要性が高まり、その実現性も高まってきていますので、自社に合った方法を検討いただければと思います。

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