2013.11.13

第185回 (C) KPIの運用【本気で連結業績を向上するための経営管理】

管理会計事業本部長 森本 朋敦

●KPIをいつ・どのように見るのか
せっかくKPIを設定しても、適切なタイミングで適切な指標をモニタリングしないと「宝の持ち腐れ」になってしまいます。この考え方は、前回に述べたKPI活用目的と、事業特性によって異なります。

①業績変動要因としてのKPI:
業績変動要因をKPIとして設定して活用する場合は、業績変動特性によってモニタリング頻度・タイミングが異なってきます。例えば、同じ電機業界であっても、デジタル型のセット系事業とアナログ型のセット系事業では異なる可能性があります。デジタル型セット系事業では、生鮮食料品であるかのように売価が急速に低下していくだけでなく、キーパーツの価格変動も激しいため、短サイクルでKPIの動きを見ておかないと、変化をタイムリーに把握することができず、手を打つのが遅れてしまい、KPIを見ている意味がなくなってしまいます。週次、日次、場合によってはそれより短サイクルで見ていく必要があるということになります。一方、アナログ型セット系事業では、ビジネスモデルが急速に変化していくという訳ではないので、逆に毎日見ていても特に打ち手に結びつかず、月次で十分というケースが多いと思います。
ただ、月次であっても、財務的業績(会計数値)よりは早く見られるようにすることは重要です。KPIはそもそも業績変動要因を表しており、これらの数値が確定して初めて月次決算を締めていくことになりますので、会計数値より先にKPIは確定しています。このKPIを先に見ておくことによって、業績の分析は会計数値を待たずに開始できますし、どのような業績が報告されてくるかを事前に予測することも可能になります。それにより、意思決定やアクションを早めることもできますし、業績予測や見通し作成も効率的に行なうことができるようになります。
また、KPIの中でも、動くサイクル、ないしは情報を取れるサイクルが異なりますので、KPIの特性に合わせたモニタリングということにも注意が必要です。例えば、販売数量=市場規模×シェアを例に取ると、自社の販売数量は内部情報なのでいつでも入手可能ですが、市場規模やシェアは外部の市場調査結果を入手しなければなりませんので、月次などの頻度では入手できないケースがほとんどです。従って、月次では販売数量をモニタリングし、半期毎にはこれを更に市場規模とシェアにまでブレークダウンして見る、というような運用上の工夫が必要です。

②先行指標としてのKPI:
業績の先行指標としてKPIを活用する場合は、「先行指標」である以上、タイムリー性が生命線になります。例えば、流通在庫とか、前回例に挙げた試乗率など、日常的な打ち手につなげていくために見るものですので、月次というようなサイクルでは意味を成しません。先行指標としてのKPIを設定、モニタリングする場合は、やはり週次や日次など、月次より短サイクルで見ていく必要があります。

③中長期施策の進捗状況把握としてのKPI:
この場合のKPIは息の長い活動の定点観測の意味合いになりますので、場合によっては月次でもほとんど変動しないようなケースが少なくありません。また、定点観測時の「値」そのものよりも、最終的に達成・実現できるのかどうかという見通しの方が情報としての重要性が高いのが通常です。
従って、このようなKPIの活用を行う場合には、KPIの達成見通しをGreen:予定通りの進捗で達成可能、Yellow:遅れは生じているがリカバリー可能、Red:このままでは達成できない、というようなG/Y/Rで自己評価をして入力してもらう方法が効果的です。特に、’Red’というのは、その組織からの応援要請のようなものですから、施策の優先順位やリソース配分の再検討を行う必要があるというアラートになります。
モニタリングにおいても、すべてのKPIを見るのではなく、Rだけを見るとか、G→Y、Y→Rというように変化したKPIだけを見るというような重点管理が可能になります。

●KPIを「見るだけ」ではもったいない

KPIをマネジメントに用いるということは、KPIでPDCAを回すということですから、モニタリングが重要であることは言うまでもありません。しかし、KPIの実績データが蓄積されてくると、更に別の使い方ができるようになります。その最も典型的な例が「相関分析」です。
KPIの活用方法として3つのうちのどれを狙うにしても、業績に大きな影響を与えるであろうことからKPIを設定することに変わりはありません。しかし、実際には、KPIによって業績に与える影響の大きさは異なりますので、実際にはどのKPIがどの程度業績に影響を与えているのかという相関分析を行うことによって、KPIの背景にある施策の重要性の判断ができますし、相関性が低いKPIを廃止して新たなKPIを設定するなどKPI自体の見直しにも役立ちます。
また、相関関係(業績への感応度)が分かれば、どの施策でどの程度の効果(KPI値の改善)が上がり、どれくらいの業績が見込めるかという業績予測にも活用できます。経営者が知りたいのは「結局、それでどうなる?」ということですので、KPIの活用目的として、最終的には予測可能性を高めることまで狙っていただく価値は高いと思います。

MAIL MAGAZINE

メールマガジン

NEWS

ニュース

SEMINAR / EVENT

セミナー / イベント

セミナー/イベント一覧を見る

お問い合わせ