2014.01.15

第189回 (B) SFプロトタイピング【IT・情報システム支援】

株式会社インターネットディスクロージャー 代表取締役社長 公認会計士 滝澤 博

「SFプロトタイピング」という言葉をご存知ですか?SFはもちろんサイエンスフィクションです。「インテルの製品開発を支えるSFプロトタイピング」(亜紀書房)という本に出会って大変驚きました。SFを未来予測のツールとする考え方はそう珍しいものではありませんが、驚いたのは大きいとはいえ一企業がSFをベースに未来予測を行う、専門の研究員を置いていることについてです。本の帯には「著者はインテル社のフューチャリスト(未来研究員)。ミッションはSFを使った「10年後」の予測。SFプロトタイプは現実の科学技術をもとにした小説や映画、コミックのこと。」とあります。

著者ブライアン・ディビッド・ジョンソンの仕事は、SFをベースに未来を予測し、予測された未来でインテルがどんな位置を占めるか「未来に対して実行可能なビジョンをつくる」ことが仕事というではありませんか。ここで、重要なことは「現実の科学技術にもとづいて」プロトタイピングの構築を行うという点です。

SFだからといっていきなりタイムマシンがでてくるわけではありません。著者が触発された例として10代の時にみた「ウォーゲーム」という映画をあげています。政府が開発した巨大な戦争シミュレーションシステムに侵入してしまった少年がゲームと勘違いし、あやうくソ連相手のミサイル戦争を起こしそうになるという物語です。1983年の映画ですが、現在の視点でみれば、少年が高性能なPCを 操り政府のシステムに侵入するということはそう不自然な設定でもないように思えます。
一方、ソ連が1991年には崩壊してしまったことを考えれば、この点についてこの映画は未来予測を大きく外しています。著者のディビッドがもっとも刺激を受けたのは、物語から垣間見えたシステムアーキテクチャやネットワーク構造だったそうです。ここに、SFプロトタイピングの一つの有効性が隠されているように思えます。つまり、SFプロトタイピングは個別機能についての未来予測よりは、シーンとして包括的な未来を垣間見せることにより、現在から未来への道筋を想像させるのです。

SFプロトタイピングの手法は次の5つのステップで構成されます。(興味ある方はぜひ原著をお読みください。)

Step1 科学を選び、世界を作る
Step2 科学の変化点
Step3 科学が人々に及ぼす影響
Step4 人間の変化点
Step5 何が学べるのか

SFに刺激を受けたと思われる、現実の社名や製品名は既に多く存在します。アシモフの名作「I,Robot」はアイロボット社になっていますし、スタートレックの世界で多用されるレプリケーター(有名な転送装置から発展した、物質複製装置)は3Dプリンターの製品名になっています。

日本では、鉄腕アトムの手塚治虫が実に見事な未来描写を行っている場面があります。アトムが科学省の精密機械局で誕生するまでの、単能機から複合機そして2足歩行ロボットの誕生にいたるまでの描写は今読んでもまったく違和感を覚えません。日本で2足歩行ロボットが他国にさきがけて進歩したのは偶然ではありません。アトムで描かれた、良質のSFプロトタイピングの世界が、ホンダのアシモやロボット作家、高橋智隆さん(ロボガレージ代表)を生んだのだと確信しています。(日本のロボットベンチャー獲得に走ったグーグルは目が高い)SFプロトタイピングは万能ではありません。大のSF好きの筆者ですが、今までのSFで、インターネット社会の到来を予測していたSFはちょっと記憶にありません。とはいえ、SFプロトタイピングの手法が魅力的・刺激的である点は疑いがありません。

みなさんも、たとえば「Diva Consolidate!」というだけで連結決算が完了する世界を想像(創造)してみてください。

MAIL MAGAZINE

メールマガジン

NEWS

ニュース

SEMINAR / EVENT

セミナー / イベント

セミナー/イベント一覧を見る

お問い合わせ