2015.05.27

第224回 (A) 海の中でのジレンマ 【ディーバ哲学】

コンサルティング事業本部 事業推進室 マネージャー 井上 裕介

“スキューバダイビング”と聞いて、皆様はどのようなイメージを思い浮かべるでしょうか。「フワフワ飛んでいて気持ち良さそう。」「いつかはやってみたいけど、敷居が高そう。」「海の中なんて、何かあったら危険そう。」「考えるだけで息が詰まる」など、様々なイメージをお持ちかと思います。
今回は、少し違った視点でスキューバダイビングをご紹介したいと思います。

スキューバダイビングはご存知の通り、酸素ボンベを背負って海の中を探索するレジャーです。
通常は、1本のダイビングで50分から1時間程度海の中で過ごすことになり、多い時には1日に5本潜ることもあります。
スキューバダイビングは地上とは異なる「海の中」という非日常な状況でダイナミックな海中世界を楽しむことが出来る、非常に魅力的なレジャーと言えます。
ただ、一方で最近も痛ましい事故のニュースがありましたが、レジャーとは言え自然が相手であるため常に危険と隣り合わせとなります。

ダイビングをしているとよく、「サメに出くわしたら襲われないの?危なくない?」というお話を聞くことがありますが、ルールさえ守っていればサメは危険ではありません。
むしろ探しに行く感じです。
ダイビングの本当の危険はサメではなく、「減圧症」と「遭難事故」です。

減圧症とは、高圧環境下で血液や組織中に溶けていた窒素が、減圧に伴い気泡を作る病気です。長時間の潜水や急激な浮上などにより体内の窒素が気泡を作ってしまうのです。
一方、遭難事故は文字通り海で遭難してしまうことです。
海の中では、目に見えない海流が発生するため、海域によっては上下左右あっという間に流されてしまうことがあります。

こういった危険に対処すべく、ダイバーはダイブコンピュータ(腕時計型の電子機器)や残圧計、コンパスを使用して、海の中では常に深度や残圧、進むべき方向を確認しておく必要があります。
特に海外では、日本のように手取り・足取りインストラクターが指示してくれるということはなく、現地ガイドはあくまで水中の「ガイド」であって、リスク管理は自己責任のルールが徹底されています。
少し大げさですがダイバーはリスク管理しながら海を楽しむというジレンマを抱えることになるのです。

<ケース①>
非常に慎重なAさんは海中の美しい景色や珍しい海の生き物を楽しむことなく、ダイブコンピュータや残圧、コンパスばかり見ています。そのため、少し先で一瞬横切ったマンタを見逃してしまいました。

<ケース②>
能天気なBさんは深度や方向など気にせず、自由気ままに海中散歩を楽しんでいます。眼下で通り過ぎたマンタを追ってどんどん深度を下げて追いかけてしまいました。

当然Aさん、Bさん、どちらもダイバーとしては「残念」です。
「的確にリスク管理をしながら同時に海を満喫する。」これが理想的なダイバーだからです。
リスク管理に気を取られ過ぎると、本来の目的である海を楽しむということが出来ず、ただ海を楽しむことだけを追求すると、リスクを負ってしまいます。まさに海の中でのジレンマです。

話は少し飛びますが、こういったジレンマは実際の仕事の場面でもあるように思えます。
例えば、プロジェクトにはスケジュール管理やリスク管理、課題管理、方向性・当初の達成目標の再確認などいわゆるプロジェクト管理が必要です。
しかし、一方で新たな分野での取り組み、チャレンジプロジェクトの場合には、「木を見て森を見ず」ではないですが、細かい部分に目がいってしまい全体を見失うことがあります。仕事上、このような探究心は不要かもしれませんが、その探究心や掘り下げが後々の自己成長や気づきにつながることもあります。

皆様のお仕事ではいかがでしょうか。

仕事をしている時間は人生の3分の1と言われます。それ以上の方もいらっしゃるかと思います。
「どうせ仕事をするなら楽しんでやらないと!」と、耳にすることがありますが、バランスを取りながらの仕事は本当に難しいと感じます。ひょっとしたら、人生そのものが様々なジレンマとの戦いなのかもしれません。忙しい毎日に追われがちになってしまいますが、少し立ち止まって考えてみるのもいいかもしれません。
もちろん私はレジャーでも仕事でも、そして人生でも「減圧症にも遭難事故にも合わずに、そしてマンタを絶対に見逃さないダイバー」でありたいと思います。

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