2020.08.05

第359回 (B) 歴史小説読書のススメ

東日本第2事業部 コンサルティングサービス部 吉橋 誠司

緊急事態宣言以降、ステイホームのおともに様々なものが流行っていますが皆さんは何をお試しになったでしょうか。
かく言う私もお取り寄せや大掃除小掃除、断捨離と色々かじってみたのですが、お金も根気も続かず、大河ドラマも中断してしまい、結局昔から続けていた読書が残りました。

世情まだまだ予断を許さぬ中で在宅時間も長くなると思いますが、そんなときに少しでもココロを癒すのに読書などは如何でしょうか。好きな時に読み始めて好きな時に中断できますし、普段あまりやらないこと、読まないジャンルが意外にリフレッシュとなったり新しい気付きに繋がることがあるものです。

と、いうことで、今回は独断で歴史・時代小説の中からお勧めの本を何冊かご紹介したいと思います。
ご紹介する作品は手軽に手に取って頂けて気晴らしにもなる様、文庫で入手でき読後感の良いものをピックアップしてみました。

●「剣豪将軍義輝」(上・中・下巻) 宮本昌孝 著、徳間文庫刊

主題としてはかなり珍しい足利第13代将軍の義輝が主人公。わずか11歳で将軍となり、塚原卜伝から一の太刀を授けられ、剣豪将軍と呼ばれてから松永弾正と三好三人衆に殺されるまでの生涯を書いた、剣豪小説というよりは義輝の人としての成長を描いた成長譚ともいうべき作品です。

「轟っ、轟っ、轟っ・・・・。火山の噴火を思わせるように、紫紺の空を茜に染めて、山上の城が燃え上がった。・・・」
で始まる冒頭はいかにも、作者本人がファンであると公言している柴錬、隆慶一郎にも似た激しさですが、読み進む本文は骨太ながら繊細であり、細かく張った伏線をひとつ残らず回収していく展開のウマさに思わず心が躍ります。

義輝の最期は史実が物語る通り非業の死を迎えることとなりますが、その最期は決して悲愴なものではなく、未来への希望を想起させるあたりが心憎い演出です。そしてその伏線は10年後に刊行された続編ともいうべき作品「海王」で回収されることとなります。

元々SF、ライトノベル出身の作家ということもあってか設定やストーリー展開が小気味良く、また伝奇ものではありますがあまり破たんのない構成で、本作者の作品はどれも読後感が非常に爽やかです。
是非お読みください。但し、古い刊行ですので書店に在庫がなく“お取り寄せ”になるかもしれません。

●「孤篷の人」 葉室麟 著、角川文庫刊

2012年に「蜩(ひぐらし)ノ記」で直木賞を受賞した葉室麟の、2016年の秀作です。
戦国乱世の時代に生まれ大名茶人として名を馳せた小堀遠州の心模様をテーマに、晩年の遠州に、過去に出会った人々とのエピソードを回想させる構成で自身の人生を語らせます。
戦国期を書いた作品でありながら荒事は殆どなく淡々と書かれた文章には、題材が小堀遠州だからだけではなく作者の優しさを感じられ、読み始めると引き込まれて一気に最後まで読んでしまいます。

章立てで、各章には茶道具の名前が配されており、それぞれに登場人物が異なります。
石田三成や後水尾天皇、沢庵和尚、細川忠興や伊達政宗といった人々とのエピソードもありますが、個人的には義父である藤堂高虎の章がお勧めです。
ゆったりした気持ちになりたいときにお読みください。

番外:「へうげもの」 山田芳裕 著、講談社刊(単行本)

こちらは番外、小説ではなくコミックです。「へうげもの」と書いてひょうげものと読みます。
戦国時代、織田信長の家臣の家に生まれやがて利休七哲に数えられ、利休死後は天下一の茶頭となり数寄大名として大成、秀吉、秀忠にも仕え、しかし最後は謀反者として自死することとなる主人公古田織部の“生きた証を残したい”という心の葛藤・苦闘を中心に、「部か数寄か、それが問題だ。」をテーマに掲げてこの時代を「武」(領土欲・出世欲)とは異なる「数寄」という価値観で読み解き、大胆な解釈で戦国期の事象を説いて見せます。

古田織部の生きる時代の史実をかなり丁寧になぞりながら大胆な解釈とコミックなりのデフォルメを加えつつ破たんしないギリギリのところでストーリーを進め、また作者の独特な画風とも相まって非常に面白い歴史コミックに仕上がっています。
原作はなく作者の着想によるものですが、茶の湯、数寄の文化が歴史に与えた影響を書いた歴史書籍や小説も多く出ている昨今決しておかしなテーマではないので、戦国もの好きの方にはお勧めです。


以上、2作品プラス1を下手な文章でご紹介しましたが、興味の湧いたものはありましたでしょうか。
どちらを見てもコロナの話題ばかりの世の中ですが、ココロのリフレッシュにお役に立てば幸いです。

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