2021.06.02

仮説『個人における資産形成のプロセスに企業価値向上のプロセスを用いられないか』

事業統括本部 東日本第1事業部 事業開発2部 山口 洋輔

最近、弊社の多数のお客様より、経営課題に「企業価値向上」が挙がっている旨をお聞きします。
ふと、この「企業価値向上」の考え方を「個人における資産形成」に流用ができないかと思いました。
最近、私自身が資産形成の必要性を意識しはじめたこともあり、自分なりの仮説を考えてみました。

まず、大前提となる「企業価値向上」の定義について調べてみました。
「企業価値評価 バリュエーションの理論と実践 上(※1)」の第6版に、以下のような記述があります。

「企業は、手持ちのキャッシュを投資して、より多くのキャッシュを将来生み出すことで、その所有者に対して価値を創造する。創造される企業価値は、企業活動が生み出すキャッシュフローから投資額を差し引いた額に等しい。」

このことから、将来キャッシュフローを最大化させることが、「企業価値向上」と読み取れます。

次に「キャッシュフロー最大化」のプロセスについても調べてみました。以下の2つのプロセスから説明できます。

①投資効率の指標としての『投下資本利益率(ROIC)と資本コスト』
 ROICが資本コストを上回った場合に、キャッシュフローがプラスになります。例えば、固定資産を購入する場合は、NPV法(正味現在価値法)などにより、将来的に生み出されるキャッシュフローを現在価値に置き換えて、借入による利息や株式配当の支払いといった資本コストを差し引いて、投資判断が行われています。

②経営資源の配分を決める『事業ポートフォリオマネジメント』
 限られた資源を最大限有効に活用すべく、その配分は最適化される必要があります。重点投資されるべき事業を取捨選択が必要であり、その前提として各事業の実力値や将来性の見える化をしていかなくてはなりません。
 経済産業省が公表している「事業再編実務指針~事業ポートフォリオと組織の変革に向けて~(※2)」には以下のように記載されております。
「既存企業の持続的な成長の実現に向けて「両利きの経営」を実践するためには、事業ポートフォリオの不断の見直しと最適化が不可欠であり、経営者(グループ本社のCEO)が本気で取り組む必要がある。」
※ここでいう両利きの経営とは、①既存事業の効率化と漸進型改善と、②新規事業の実験と行動の両者を同時に行う経営を意味します。

既存事業でキャッシュを稼ぎつつ、投資効率を鑑みながら、新規事業を展開していくことが、将来的なキャッシュフロー最大化のポイントといえそうです。

さて、いよいよ本題です。
皆様は、ライフプランの実現に向けて資産形成を行っていらしゃいますでしょうか。
人生における各種イベントを想定して、どのくらいのお金がかかるかを考えての準備、あるいは病気や災害といった想定外の事態に備えておく必要性について、金融庁のWebサイト(※3)にも記載されています。
ここからは、冒頭に記載した「企業価値向上」プロセスと対比する形で、「個人の資産形成」プロセスを考えていきます。

①投資効率としての指標である「利回りと金利」
 「投下資本利益率(ROIC)と資本コスト」と同じように、手元の現金を使用して収益を生む投資資産を購入した場合は、その資産からの収益を見込めます。あるいは借入を行い、調達金利を上回る期待利回りの投資を行えれば、より高い投資効率を見込めます。結果的に将来キャッシュフローは、現状以上(プラス)となります。代表的なものの一つに株式投資がありますが、「貯蓄から投資へ」というスローガンのもと、国が後押しするNISAやiDeCoについてもこの文脈での政策と言えます。
※NISAは、毎年一定金額の範囲内で購入したこれらの金融商品から得られる利益が非課税になる制度です。iDeCoは個人型確定拠出年金と呼ばれ、国が創設した個人型年金制度です。

②手元資金を配分するプロセスとしての「資産ポートフォリオの作成」
 個人においても(当然)資源は有限ですので、企業における「事業ポートフォリオマネジメント」と同様に、投資すべき対象の資産を選定し、資源を配分していく必要があります。投資対象ごとにリスクの大きさが異なりますので、個人のリスク許容度に応じてポートフォリオを作成することで、地に足をつけた投資ができるようになります。
 経済産業省が公表している「事業再編実務指針~事業ポートフォリオと組織の変革に向けて~」の「両利きの経営」の考え方を応用するならば、収益性のある投資資産と、成長性のある投資資産でポートフォリオを構成すれば、安定的なキャッシュの創出と、資産形成が期待できます。

以上のように、個人における資産形成には、企業価値向上のプロセスが大いに参考になる部分があります。人それぞれライフプランは異なりますが、その実現手段の一つの側面として経済的な側面があることは万人に共通しており、各人が向き合わなければならない問題だと思います。皆様のライフプラン実現の一つの手段やヒントとして、「企業価値向上」のプロセスから学んでみてはいかがでしょうか。

(※1)著者 マッキンゼー・アンド・カンパニー/ティム・コラー/マーク・フーカート/デイビッド・ウェッセルズ/マッキンゼー・コーポレート・ファイナンス・グループ(翻訳)
(※2)経済産業省『事業再編実務指針~事業ポートフォリオと組織の変革に向けて~』
https://www.meti.go.jp/press/2020/07/20200731003/20200731003.html
(※3)金融庁 『投資の基本』
https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/knowledge/basic/index.html

ディーバ主催オンラインセミナー「ESGに貢献する非財務情報マネジメント~企業価値向上の視点を踏まえて~」

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