2008.03.07

第44回 マネジメント・アプローチと経営会計

株式会社ディーバ 代表取締役社長 森川 徹治

昨年8月のいわゆる「東京合意」から加速した企業会計基準委員会によるコンバージェンスへの取り組みのひとつに、「セグメント情報等の開示に対するマネジメント・アプローチの採用」があります。「経営上の意思決定を行い、業績を評価するために、経営者が企業を事業の構成単位に分別した方法によりセグメント情報を開示する」というものです。米国会計基準や国際会計基準では、既に導入されているルールです。

経営の重要な役割の一つに経営資源の配分があります。この配分を考える単位が公開草案における「事業セグメント」に該当するものです。そして、一定のルールに基づいて複数の「事業セグメント」を集約して、開示用の「報告セグメント」を決定するというものです。

財務連結決算においては、「事業セグメント」の最小単位を独立した会社単位と一致させる方法が多く用いられます。事業戦略に基づいた投資判断をしていくには、損益計算書上の項目だけでなく、貸借対照表上の項目も必要になりますが、法人として独立した会社でないと貸借対照表の作成を継続的に行うことが難しくなることが背景にあります。

一方で、実際の連結経営の単位は「事業セグメント」と「事業会社」が絡み合い、一つのグループ会社が複数の「事業セグメント」に属したり、グループ会社内の事業部の意思決定が、その事業部を「事業セグメント」として統括する親会社によって直接行われるなど、「事業セグメント」に対するグループ会社の責任と役割が混沌としている場合が多いように感じます。

これは、実際の連結経営における「事業セグメント」が、これまでの事業成長における歴史上のさまざまな経緯を継承していることに起因していることが多いようです。このような場合は、システム的にデータを配賦・集計することで疑似的に「経営専用_事業セグメント」の資料を作成します。しかし、権限と責任を伴った現実の組織と「経営専用_事業セグメント」が一致しないために、実効性を伴う経営情報にならないという話もよく伺います。

このような課題を解決するひとつのアプローチとして、「最高経営意思決定機関」も外部へ開示している財務会計情報を軸としてマネジメントを行うという考え方があります。この考え方が「経営会計」です。「経営会計」とは企業の経営者だけではなく、事業の執行を担うメンバーや投資家、さらには取引先までも含む、「意思決定を必要とするすべての事業利害関係者に対する『意思決定のための会計』」です。財務会計や管理会計という区別はなく、計画・予算・実績といったすべての会計情報を外部開示可能な会計規則で統合している点が特徴です。

経営情報の第一の利用者である経営者にとっては、規則に縛られ面倒と感じるかもしれません。しかし、自己流の経営から脱皮し世界に通用する経営力を組織的に獲得するためにも、事業戦略のアカウンタビリティを担保する、開示を前提とした情報で経営を実践することが、結果的には経営品質の向上につながるのではないでしょうか。

経営者専用の情報を使わず、公開可能な情報で経営することは、経営という業務の位置づけを大きく変えるものになるかもしれません。

以前、とある経営者の方が「経営は社員への奉仕を通してお客様満足を獲得する活動である。」とおっしゃっていたことを思い出します。

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