2008.04.04

第46回 セグメント情報の現実とマネジメントアプローチ

公認会計士 岩佐 泰次

3月21日、ASBJより「セグメント情報等の開示に関する会計基準」が公表されました。セグメント情報自体は注記情報ですが、財務諸表本体以上に大きなインパクトのある会計基準ではないかと感じています。コンバージェンス関連の中でも、経営マインドへ与える影響が非常に大きい会計基準と考えます。

一言で言えば、「マネジメントアプローチ」であり、管理会計と財務会計が分断された現状に対して改善要求を突きつけている会計基準とも言えます。現状マネジメントアプローチでセグメント情報を開示している会社にとってそれほど違和感はないかもしれませんが、両者を別目的で捉えているような会社では、財務会計の結果である開示制度に、企業内部の管理会計上の会計処理や利益概念という異質なものが混入するという感覚を覚えるケースもあるのではないかと思います。実際これまで見てきた制度におけるセグメント情報の現実や企業内部の管理会計の状況から、私自身異質なものが混ざり合うという感覚を持つ面もあります。

そもそもマネジメントアプローチと従来のセグメンテーションとの違いですが、従来は産業別の区分であるとか、連結財務諸表を分解するアプローチというような説明がなされます。ただ両者は完全に別個のものではなく、従来よりマネジメントアプローチで開示しているケースも多々あります。一方で産業別故、単一セグメントだとして開示しないケースも見受けられ、このような弊害が起きないよう、言い訳の余地をなくすのが「マネジメントアプローチ」採用の趣旨となります。米国基準や国際会計基準でも当初は日本の産業別アプローチに近い方法が採用されていましたが、同様の弊害から「マネジメントアプローチ」に変更するという経緯を経ています。

では、実際マネジメントアプローチと乖離する、現状のセグメント情報開示とはどのようなものか以下で類型化してみます。
i)当初は一致してスタートしたが、変更を繰り返す管理会計とは別に、比較可能性から変更しない制度の結果、徐々に乖離し、いつの間にか別物になっているケース
ii)最初から別物として設定しているケース(そもそも利益概念が異なるケースや、事業軸と所在地軸の併用がない制度開示では表現できないケースなど)
iii)本来有効なセグメント情報があるにも関わらず、重要性がない、単一セグメントであるなどの理由で開示していないケース

これらのケースでは、マネジメントアプローチの採用で非常に大きな影響・変革をもたらす可能性があります。そこで日頃の管理コンサルティングの中で感じる、管理会計面からみた、マネジメントアプローチ導入の現実的影響について考察してみたいと思います。

・財務会計では期ズレを容認しているが、内部の業績評価では同月管理している場合:
このケースは非常に多く見受けられ、会社によっては二重の予算を保持しているケースさえあります。このような期ズレ決算と同月管理が同居している現状に対して、会社の’真の決算’はどちらなのかを考える良い機会になるのではないかと思います。またセグメント情報のみ同月ベースの数値で、連結財務諸表は期ズレベースの数値とし、調整欄で差額表示とすることが許されるのかも、非常に重要な論点になってくると思われます。

・内部の経営意思決定や業績評価では独自の利益概念を採用している場合:
マネジメントアプローチであることから当該利益概念で開示することは可能であり開示する必要がありますが、投資家への説明や連結財務諸表数値との整合性については今まで以上に十分な考慮が必要になってきます。これまでもIR的な事業報告とセグメント情報が整合していないという問題はありましたが、同じ財務諸表内にも関わらず整合しないということが許容されるのかも、重要な論点になってくると思われます。

他にも、連結範囲が財務会計と管理会計で異なっているケースでは連結範囲の判定結果に影響を与えるのではないか、会計監査のアプローチに変化があるのではないか(例えば管理会計上の利益の保証も必要など)、事業活動上の懸念(同業他社への情報、価格交渉上の懸念など)を考慮して内部管理上のセグメンテーションを決定する必要性が出てくるのではないか、予算制度への影響はないかなど、多岐にわたり影響が出てくることが予想されます。適用開始時期は平成22年4月1日以降開始事業年度からになりますが、早めの検討着手が必要になってくると思います。ディーバプロジェクトの中でもすでに検討を開始しているプロジェクトが出てきているのが現状です。

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