2008.05.30

第50回 内部取引照合業務の内部統制前と後

公認会計士 岩佐 泰次

連結決算業務の中核を占める内部取引照合業務に対するスタンスは、内部統制を機に大きく変化したのではないかと思います。

内部統制前は、企業側も監査法人側も損益や純資産にインパクトがなく、ボリュームだけの話だとして、あまり高い要求はしてこなかったように思います。ただ内部統制への取組状況についてお客様や監査法人の方と話していると、内部取引照合でそもそも何故そんなに多額の差異が出るのか、個別決算自体が間違っているのではないか、会計処理が不統一であることそのものではないか、など従来あまり聞かれなかった意見が聞かれるようになってきました。内部統制前と実態は何も変わっていないにもかかわらず、大きくスタンスが変化してきたことを感じています。

そういう状況から、また更なる決算早期化の要請から、従来の内部取引照合業務の改善に着手し始めているケースもあるかとは思います。具体的には金額基準を以前より引き下げ原因調査の対象範囲を広げるケースや、本当の差異のみを把握すべく為替の影響を排除した取引通貨別の照合を実施しているケースや、場合によってはインボイス単位までトレースできるような仕組みの検討さえなされています。また子会社同士や事業部・事業所間同士の取引照合については親会社や本社が関与することなく照合作業ができるような仕組み作りへの取組みも見られます。

ただこういった取組みにおいては、内部取引照合業務の特性がポイントになってきます。連結決算業務の多くは一定の仮定の下、本社側で計算処理できますが、内部取引照合業務における原因調査は取引そのものへ踏み込んでいくことを意味し、本社側での作業には限界があり、この点が内部取引照合業務の特性になります。つまり子会社や事業部・事業所といった取引主体が原因調査の中心になり、連結決算担当者そのものではなくなる可能性があります。一方で子会社や事業部・事業所からみれば個別決算業務の一環として日常的に照合業務を行っており、この業務との関連もポイントになってきます。

このように連結決算業務の一つとしての内部取引照合業務は、一歩踏み込むことで役割分担や業務内容の面で個別決算業務の領域ともいえる部分に入ってしまいます。むしろ内部取引照合業務自体は個別決算業務そのもので、当該業務を終えた上で本社へデータ提出し、そこからが連結決算業務なのかもしれません。

いずれにしても目的は連結財務諸表の信頼性確保ですが、役割分担や業務内容等において連結決算担当者の枠を超える中、連結業務としてどこまで要求すべきかについて、実際の取組みにあたっては十分な検討が必要なのではないかと思います。

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