2008.06.27

第52回 制度と管理の間の3つの乖離

公認会計士 岩佐 泰次

企業経営上、制度会計と管理会計をいかに融合していくかということは1つのテーマであり、特に内部統制やマネジメントアプローチなどの背景もあり、非常に重要なテーマとなってきています。ただこのテーマの実現に関連して、現状は制度と管理の間には3つの乖離があるように感じています。

1点目は「地理的乖離」です。特に関西企業など東京以外の企業で東京と2本社制をとる企業に多いのですが、経理部などの制度部隊は関西本社などで業務を行い、企画部系の管理部隊は東京本社で業務を行うというケースがよく見受けられます。

2点目は「人的乖離」です。1点目の「地理的乖離」などが理由の場合もあると思いますが、人的なコミュニケーションが非常に少ないケースです。

3点目は「財務的乖離」です。これは決算業務プロセスの中で制度会計と管理会計との整合性を確認するプロセスが存在しない、あるいは公表用の決算予想数値作成上などの最低限の数値しか共有しないケースです。

1点目・2点目はそれ自体問題ではないのですが、3点目とあいまって制度と管理との乖離を決定付けているようなケースもあるように思います。この財務的乖離は、元々は大きな差ではなかったかもしれませんが、長年乖離を放置しそれぞれ独自の進化を遂げた結果、また地理的・人的乖離も手伝ってお互いに何をしているか全く分からないという状態になっているケースもあるのではないかと思います。

ではこれらの乖離、特に財務的乖離を放置することは何を意味し、どのような影響があるのでしょうか。制度会計は投資家・債権者といった財務諸表利用者への報告であり、一方管理会計は経営の意思決定に利用されているものであり、財務的乖離は経営者と財務諸表利用者との乖離そのものなのかもしれません。株主との正面からの対話を避け、過剰防衛に走る昨今の日本企業のスタンスと重なる部分を感じます。つまり乖離を放置し続けることは、投資家を中心とした財務諸表利用者を無視し続けることを意味し、株価や資金調達などの面で弊害をもたらす可能性さえあると考えます。

またグループ会社の側からみれば2つの報告先が存在することにもなり(実質同じデータを制度用と管理用とで二重に報告)、財務的乖離がグループ会社へ負荷を与えているケースもあるかと思います。内部統制として業務プロセスの標準化が叫ばれていながら、この乖離を放置し、二重の報告業務それぞれでプロセスを評価しているケースさえあるように思います。つまり財務的乖離はグループ会社などの身内に対してもマイナスの影響を与えていることになると考えます。

最後にこれら乖離の解決方法について考えてみたいと思います。まず地理的乖離については、これだけネットワークが発展している状況で解決方法がないということはないと思います。次いで人的乖離ですが、財務数値を人が作成している以上は財務的乖離と一体のものであり、これら人的・財務的乖離の解決が最大のポイントになってきます。ただ抜本的な解決策はなく、制度と管理の融合を図るという強い使命感の下、一定期間をかけて解決していくしかありません。乖離が大きければ相当程度の労力と時間が必要になってくると思います。またその作業も1つ1つ差異要因をひも解き、対応方法を探す地道な作業であり、作業中には管理会計の1つ1つの処理に対する強いこだわりと愛着が壁になることもあります。このこだわりと愛着は先輩達が会社の実態をより適切に表現しようと努力した産物であり、企業固有の資産であり重視すべき面もありますが、一方でこのこだわりと愛着を重視するあまり制度と管理の融合が一向に図られないのでは意味がありません。やみくもに制度と管理の一致を図ることは避けるべきですが、企業活動の実態は1つしかなく、実態が複数存在してしまう処理については見直しを検討すべきです。

またこのような人的乖離や財務的乖離の解決を促進させるために、同一の会計システムで制度会計と管理会計の両方を実施するような方法も効果的ではないかと思います。一度離れてしまったものを一つ屋根の下に入れることで、ある意味強制的に人的・財務的なコミュニケーションが図れるのではないかと思います。

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