2008.10.03

第59回 IFRSにおける「無形固定資産」

公認会計士 岩佐 泰次

日本でもIFRS受入れの方向性が明確になりつつあり、メルマガでもIFRSの特徴的な、あるいは興味深い内容について触れていきたいと思います。今回は企業結合時に発生する「無形固定資産」と「のれん」の関連について触れてみたいと思います。「のれん」については前回に引続きとなりますが、前回は「のれん」認識’後’の会計処理の話が中心でしたが、今回は「のれん」認識’時’の会計処理について、「無形固定資産」と絡めて、また日本基準とIFRSを比較する形で概説してみたいと思います。

企業結合時には買収価額と買収企業の純資産をそれぞれ公正価値で評価し、両者の差額が「のれん」の源泉となります。この差額はそのまま全額「のれん」となるわけではなく、まずは識別可能な「無形固定資産」を認識した上で、その後の残余が「のれん」となります。この識別可能な無形固定資産の認識に関する規定のスタンスが日本基準とIFRSで異なっています。日本基準では無形固定資産へ配分することが’できる’という容認規定となっていますが、IFRSでは以下の要件を満たすものは無形固定資産へ配分’しなければならない’という強制規定になっています。
・分離可能性基準
・法契約基準

そしてこのIFRSの基準に従うと以下のようなもの(IFRSにおいて例示列挙)が、「のれん」とは区分して「無形固定資産」として認識されることになり、非常に特徴的な内容になっています。

例えば顧客リストは、通常売却・賃貸等が可能であることから分離可能性基準を満たすとして、「のれん」とは区分し「無形固定資産」として認識する必要があり、また顧客との契約や各種取引関係それ自体を「無形固定資産」として認識する必要があるのです。他に、労働力なども雇用契約という法契約基準に従い「無形固定資産」として認識する必要があります。つまり人財がBS計上されるのです。さらには商標権として登録されていないようなトレードマークやインターネットのドメイン名なども例示にあがっています。

これら「無形固定資産」は買収企業のBSに計上されていたかどうかは全く問題ではなく、企業結合時に改めて全て識別しなおすのです。現実の実務、特に日本企業でこのような無形固定資産の認識がどこまでのものになるかはまだ見えない部分もありますが、少なくともこれまでの日本企業では買収時に「のれん」以外の「無形固定資産」が計上されることは決して多くなく、結果「のれん」の金額が膨大になるケースは多かったように思います。その膨大な「のれん」の実態をあぶり出す作業が上記のような「無形固定資産」の個別認識なのです。

また、日本基準とIFRSのスタンスの違いは、概念アプローチの相違といえばそれまでですが、それ以上に会計基準設定主体の価値観、具体的には欧州中心の価値観が色濃く反映されているようにも思います。「無形固定資産」か「のれん」かの違いは表示でみれば無形固定資産内での入り繰りではありますが、企業活動におけるオフバランス資産あるいは無形の価値に対する意識の差を強く感じます。当然測定面での客観性確保の問題はあると思いますが、そのような課題以上に、無形の資産を認識するという強い「意思」を感じます。一方で客観性・確実性や保守的思考を理由に、「企業会計」でありながら企業活動の実態を反映し切れず、税法・会社法会計に引きずられ続ける日本基準の「意思」との差を感じます。IFRSの受入れとはそのような異なる価値観の理解・受入れであり、異文化間コミュニケーションそのものなのかもしれません。

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