2008.10.31

第61回 IFRS「連結先行」での会計基準調整について

公認会計士 岩佐 泰次

今年の8月27日に米国(SEC)がIFRS受入に係る時間軸を示したことで、日本でも受入準備が加速しつつあります。実際には「連結先行」での受入の流れが大きくなっており、今回は「連結先行」によって論点となる会計基準調整について、コメントしてみたいと思います。

まず「連結先行」とは連結財務諸表のみ先行してIFRSを適用し、個別財務諸表へのIFRS適用を先延ばしする受入アプローチを意味しています。なお個別財務諸表への適用を暫定的に先延ばしするのではなく、恒久的に適用せず、連結財務諸表と個別財務諸表とで異なる基準とする「連単分離」という受入アプローチもあります。いずれにしても連結財務諸表は個別財務諸表が出発点であり、連結財務諸表へIFRS適用となれば、その前提として個別財務諸表の会計基準調整、つまりローカル基準で個別決算を確定させた後IFRSへの修正を行う業務が必要となります。また各国がIFRS受入を進めているとはいえ、各国における税法・会社法との調整は非常に難しく、ローカル基準が完全になくなるわけではなく、ローカル基準からIFRSへの会計基準調整は不可欠な業務になると思われます。

次いで会計基準調整への対応方法についてみてみます。対応方法としては本来的には次の二つです。1つは子会社の帳簿レベルでローカル基準とIFRSの2つの財務諸表を保持する方法(帳簿対応)で、もう1つは帳簿レベルでは対応せず連結調整プロセスで会計基準調整を行う方法(連結調整対応)です。この点、IASBとしては帳簿レベルでIFRSを使用すべきというスタンスをとっていますが、現実の欧州での対応は連結調整対応の方が多いようです。なお実際の帳簿対応には、個別会計システム内で完全に二重帳簿を持つケースと個別会計システム外で会計基準調整を行うケースに分かれます。

日本においては、現行実務の状況を見る限り連結調整対応の方が多くなるのではと考えています。ただ連結調整対応というのは本来的な姿とは言えない面もあります。連結調整対応の場合、親会社の連結決算担当者が処理するだけで、子会社側では当該調整数値を見ることなく、現地トップとしては最終責任数値として認識していません。例えば会計基準調整で減損を追加計上するなど現行実務でも多い処理かと思いますが、これら減損を加味すると赤字になってしまうケースなどでも現地トップが認識しているかというと決してそうではないように思います。グループ会社の業績評価など経営管理上でもIFRSベースの考えが進んでいく場合、このような状況は健全ではないのかもしれません。一方で、従来から帳簿対応、つまり会計基準調整を子会社側で処理させ、調整後の財務諸表で監査まで受けさせている企業も存在します。子会社にそこまでさせている背景は、ローカル基準の信頼性の問題、親子間の力関係、現地経理スタッフの能力の高さであったり、様々ではあると思います。

帳簿対応、連結調整対応のどちらが正しいというものではないとは思いますが、IFRS受入、つまりグローバルベースでの会計基準統一という事実は、親会社と子会社のどちらが対応するかといった単純な作業分担の話ではないように感じています。グループ経営管理の視点にたってどちらが望ましいのか、検討に着手するタイミングではないかと考えています。

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