2008.11.14

第62回 金融資産の評価と会計基準の設定

公認会計士 斎藤 和宣

9/15のリーマン・ブラザーズの事実上の経営破綻をきっかけに急激に表面化し広がった世界的な金融危機ですが、この危機に対して欧米各国において金融当局による金融機関の支援や経済対策が打ち出されているだけでなく、経済的にも存在感の増してきた新興国においてもさまざまな金融・経済対策の手が打たれています。もちろん日本でも緊急の経済対策が検討されていますし、金利の引き下げが実行されるなど対応がとられています。こうした経済状況の下、海外での金融資産の時価評価をめぐる動きを受けASBJより実務対応報告第25号「金融資産の時価の算定に関する実務上の取扱い」が公表され、「債券の保有目的区分の変更に関する論点の整理」もコメント募集される(すでに内容は確定しているようです)など、日本でも金融資産の評価に関する一連の動きが見られます。

それぞれの内容は、「金融資産の時価の算定に関する実務上の取扱い」では適用する時価の概念や、市場価格があればそれを”時価”とするのかの論点、時価を見積もる場合の留意点についてそれぞれ解説しています。また、「債券の保有目的区分の変更に関する論点の整理」では、売買目的有価証券とその他有価証券、満期保有目的の債券の間での区分の変更可否、および基準の適用時期についての論点を提示しています。

これらの内容を踏まえて、会計処理そのものに対する詳細な論点について残念ながら私自身からコメントをできませんが、金融資産の時価評価に関する一連の対応に関してはいくつかの疑問を感じています。その1点は、ある意図(たとえば金融資産の時価評価による影響を軽減することで企業業績・株式市場の負のスパイラルを回避するなど)をもって会計処理上の取扱いの明確化や基準の見直し検討を行っているにもかかわらず、表面上は原則的な判断、正式な手続きをとっているだけのように進めている点です。

また、もう1点は、会計基準設定主体がこうした動き(公表までのスピードも異常です)に対応している点です。非常事態に緊急の対応をとることは必要だと思いますが、企業の適切な情報開示のために会計基準を設定している存在が、緊急対応に手を貸すことは適切ではなく、他の政治的手段での方法を選ぶなど別の対応があったのではないかと思われます。広く市民からの信認を受けてこその存在であるASBJにこうした役割を持たせてしまうことは、せっかくの信認を損なってしまうように思われます。わたしの疑問や懸念が的外れであり、裏切られることを期待しています。

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