2009.01.07

第65回 「ひとつくり」と経営会計

株式会社ディーバ 代表取締役社長 森川 徹治

◇ディーバ社の仕事はじめ
さて、今年のディーバ社の仕事はじめは、新年のあいさつ会から始まりました。そこでは、私たちディーバ社のビジョンである「100年企業の創造」=「持続的発展企業の創造」への決意を新たにし、かつその実現に向けた三つの理念について話をしました。まず、一つめは「衆知」による事業発展です。業務用ソフトウェアやコンサルティングサービスというものは、お客様まで含むさまざまな知識、経験をもった多くの「ひと」によって開発、提供されるものであるからです。二つめは「対等」なる人間関係の徹底です。「衆知」を集めるには、それぞれの立場、役職にかかわらず、意見をきちんと交換できることが非常に重要であるからです。三つめは「性善」に立つというものです。現在のビジネスのグローバルスタンダードは、どうも「性善」に立脚していないように感じます。しかし、ビジネスが信用を基本としている以上、「性善」、つまり「ひと」を信じることを基本として意思決定や行動を行うことが大変重要であると考えるからです。
このような話をしたのも、他の多くの産業同様に、ディーバ社のビジネスにおける最大の経営資源も「ひと」であり、「ひと」の協働により、大きな価値が創造されるものだからです。

◇「ものつくり」から「ひとつくりへ」
日本は「ものつくり」には強いといわれて久しいですが、グローバル経済において、いわゆる天然資源を持たない国がこれからも繁栄していくには、「ひとつくり」立国へシフトするよりほかはないと考えます。そもそも、「ものつくり」のつよさは「ひとつくり」にあるといわれているのですから、「ものつくり」以外の産業においても徹底的に「ひとつくり」に取り組むということです。すでに、国家の枠をこえ人々が流動化している社会です。国籍人種性別を問わず、世界的視野で人財が育つ環境を提供し、社会全体の繁栄に貢献する人財開発を通して、持続的経済発展も実現することはできないでしょうか。「ひとつくり」は大変根気がいるものでしょう。しかし、短期的視野での判断に陥りやすい「かねつくり」より長期的視点で取り組む「ひとつくり」のほうが、より高度な社会貢献を実現することができると思います。社会にはそれぞれ役割分担があるので、いずれかにかたよるとこれはまた別の問題が起こりますが、「かねつくり」より「ひとつくり」のほうが無理なく、かつ高いモチベーションを持ち、取り組みやすいと感じる人もたくさんいると思います。

◇「ひとつくり」に欠かせない人財価値の認識
ところで、主要な経営資源を「ひと」「もの」「かね」というにもかかわらず、財務諸表の貸借対照表に計上されるのは、「もの」と「かね」のみであり、「ひと」についてはオフバランスとされています。ここに大変な経営的違和感を感じ続けています。
「ひと」を最大の事業資産としてとらえ、かつその価値を高めることが企業経営にも求められる世の中では、明確に人的資産というものに対する価値がオンバランスされなければ、他の資産と同様に「ひと」という資産を増やすことへの経営努力を「だれでも当たり前に」行うということが困難なのではないでしょうか。一番重要な経営資源について、資産や資本としてではなく、費用としてしか認識できない現在の会計情報は社会全体として「ひとつくり」を推進する上で大きな障害であると思います。計測値の品質に対する議論以前に、計測そのものに取り組むという姿勢が重要と考えます。

◇経営のための会計
私は、経営とは、「預かっている事業資産を継続的に増加させることである」と考えています。事業資産とは、社会資本の一部です。社会資本に「私」の概念は存在しません。ゆえに、企業も「公器」であると理解しています。余談ですが、「公」「私」の違いとは、判断する時間軸の違いと理解しています。
「公」とは個人のライフサイクルを超えた視点、「私」とは個人のライフサイクルの中の視点という具合です。
一方、会計とは「意思決定のための情報技術の一つ」であると考えています。企業会計においては、経営者だけではなく、ステークホルダーと呼ばれるさまざまな利害関係者の意思決定を助けるものである必要があります。昨今の企業会計制度は、おもに投資家保護の観点より開示情報品質を高めるべく改正が進んでいます。しかし、きっかけは企業会計原則の最上位概念である「真実性の原則」を無視した経営者によって、企業経営全体に対する不信感が社会的な大問題に至ったからです。新たな規則を準備することで、社会全体から見れば、企業がおのおのの努力で行うよりも効率的に経営品質を向上することができるかもしれません。しかし、経営者の意思決定を不正に至らしめないための羅針盤としての会計技術の進化も欠かせないと強く感じています。ここに、従来の管理会計とは異なり、「適切」な経営判断を助け、「誠実」なる情報開示を推進するための会計というものの存在が必要なのではないかと考えます。これが財務要件を内包する管理会計、つまり「経営会計」です。「経営会計」で気をつけなければならないのは、財務会計に縛られてはいけないということです。あくまで財務会計との整合性を担保しつつ、それぞれの企業の持続的発展にとって最適な意思決定を推進できる独自の工夫をどんどんこらしていくことが大切と考えます。

☆☆☆

今年ディーバ社では、実験的ではありますが、「ひとつくり」のための「経営会計」開発の一環として人的資産を計上するもう一つのバランスシートを創り、一人ひとり、一社いっしゃの「ひとつくり」への取り組みが、豊かな未来を創ることを信じて、「もの」や「かね」以上に「ひと」に対する豊かさを高めるべく経営を実践していこうと考えています。

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