2009.03.03

第69回 企業価値を見えやすくする

公認会計士 斎藤 和宣

昨年からの経済状態は、100年に1度の経済危機といわれるほどの状況に陥っていますが、経営者にとっても投資家にとっても、企業価値を正しく認識することの必要性は相対的に増大してきていると考えています。企業価値といえば、一般的に将来のキャッシュフローから現在価値に割り引いて測定する方法が定着してきており、開示情報としてはキャッシュフロー計算書は、過去のキャッシュの生成過程を示すものとしてその有用性はとても高いと思います。

そのことを踏まえて、企業の価値を正しく表現するのは「キャッシュのみである」といえるのではないかと考えています。開示される財務諸表に限定してみると、財務諸表としての基本情報はあくまでもキャッシュフロー計算書であり、損益計算書や貸借対照表は、これまでのキャッシュの使われ方と将来のキャッシュの動きを可能な範囲で表現しているに過ぎない情報だと言えるかもしれません。ただし、現在の貸借対照表の増減からキャッシュフロー計算書を作成する方法である限りは、キャッシュの増減説明としては内容の精緻さが足りないことは否めません。とはいえ、キャッシュフローが企業価値を認識するために、不可欠で最も有用な情報であることは疑いの余地がないと思いますし、将来の損益見込みでなくキャッシュフロー見込みを開示する方が有用な情報開示になるとも考えています。

また、企業価値を見えやすくするにあたっての課題に、貴重な財産であり、将来キャッシュ獲得の源泉となる人財について、現時点では適切に表現することができないというものがあると思います。少なくも経営に利用できるレベルで測定できる必要があるでしょうし、加えて誤解なく利害関係者への開示ができることが望ましいと思います。

認識方法の1つとして、例えば、借方・貸方を超えた第3軸での評価は考えられないでしょうか。企業がヒト・モノ・カネで説明されるとするのであれば、現在のモノ・カネを表現している2軸から、ヒトを加えた3軸での可能性があるのではと考えています。そして、その第3軸は社外の人財価値と足し合わせることで、現在の借方・貸方とバランスする関係で整理できないかと考えています。

また、あくまでも借方・貸方の世界で整理するとすれば、例えば貸借とも同額で、測定時点の報酬総額などを基礎に表現することも可能で、当該会社にとっては有用であると考えていますが、他社との比較可能性や、他の資産との整合性からは問題点も残ります。

また、金額で測定することは難しいことから、従業員の属性やスキル特性で整理した人員数を認識し、かつ開示することだけでも有用なのかもしれません。たとえば、弊社であれば担当技術別の開発担当者数や、導入コンサルタントの人数などになると思われますが、マネジメント・アプローチの議論のなかであったのと同様に、競合他社に戦略情報を示すことになる弊害は留意しなければなりません。

人財を財務諸表に表現し、企業価値を見えやすくするには、対象となる人財の範囲も含めまだまだ多くの課題がありそうです。

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