2009.03.17

第70回 世界不況と四半期連結

公認会計士 岩佐 泰次

2008年度も終わりに近付こうとしていますが、2008年度は9月のリーマン・ショックを境に、上期と下期で市場環境は大きく変わってしまいました。具体的には、下期に入ってから、売上は急激に落ち込み、為替相場は急激な円高へとシフトしたのです。この事実は連結財務諸表を作成する会計技法においても様々な面で影響があったとも言えます。今回はそのあたりの影響について触れてみたいと思います。

1つは在外子会社等の財務諸表の換算技法についてです。ここは第三四半期決算や年次の見込み作業の中で身にしみて感じているのではないかと推察します。多くの会社でいわゆる「累計差額方式(※1)」が採用されていますが(ディーバ社アンケートでは71%)、この方法では第一四半期や第二四半期で発表した業績が、その後の第三四半期や年次などにおいては否定され、新しい換算レートで再換算されます。今回で言えば急激な円高の結果、実績であるはずの上期数値を下方修正しているような状況に陥っているのです。この「累計差額方式」の是非については、四半期会計基準の検討過程で大いに議論されたところではあるのですが、最終的には具体的な基準化には至っていないという背景もあります。

この換算技法の論点は、日本企業に多く見られる決算期ズレの論点を絡めてさらに話をややこしくします。「累計差額方式」の場合でも親会社の決算期と同じタイミングの為替レートが利用されていればよいのですが、海外子会社などの12月決算会社については3ヶ月前を基準にした為替レートが利用されるのです。例えば同じ米ドル建ての財務諸表でも3月決算会社と12月決算会社とでは換算レートは異なり、今期のように急激な為替変動があった場合には、IR等で行っている利益分析などの作業においても非常に説明しづらい状況になるのです。

この在外子会社等の財務諸表の換算技法について、これまでは「累計差額方式」でも「四半期単位積上方式(※2)」でも大した違いはない、という認識であったものを完全に否定され、来期からは「四半期単位積上方式」へ変更するという企業も出てきているのが現状です。

2つ目は内部取引消去についてです。ここでも決算期ズレの論点が絡んできます。親会社が3月決算、海外子会社が12月決算会社という日本企業に多く見られる状況で、親会社から海外子会社へ販売しているようなケースで、親会社の取引高を基準に消去する場合を前提にして説明します。例えば前期のように、販売が伸びている状況では3ヶ月前の子会社財務諸表をベースにすると親会社の取引高を基準に消去するのでは、過大な消去がなされ連結業績は悪化するという現象をもたらします。売れば売るほど連結業績が悪化するという現象になるのです。逆に今期のように、急激に業績が落ち込んでいる状況では、今期の連結財務諸表では消去が過小となり連結業績の落ち込みはその分は抑えられ、代わりに来期に連結業績の悪化として反映されることになります。

この内部取引消去については、表面的な対応方法はいくつかありますが、根本的には決算期ズレの課題を解消するしかありません。この点については、従来から社内でくすぶる決算期ズレによる経営管理上の弊害などもあいまって真剣に対応策(決算期の統一や仮決算対応など)に取り組む企業が増えてきていることを実感しております。

(※1)累計差額方式とは、事業年度の財務諸表との整合性を重視して、四半期ごとに過去の四半期. 財務諸表を洗い替えて再計算することにより累計情報を作成し、3ヶ月情報は当該四半期の累計. 情報から前四半期の累計情報を差し引いて計算する方式

(※2)四半期単位積上方式とは、四半期を1会計期間として3ヶ月情報を作成し、各四半期会計期間の3ヶ月情報を積上げて累計の財務諸表を作成する方式

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