2009.06.02

第75回 (A) 企業経営の罠【経営・会計最前線】

取締役 兼 業務推進本部 本部長 村瀬 協吾

1.企業を取り巻く情報
お客様や競合会社、技術情報等々の公開情報へのアクセスの容易さは、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・ダイレクトメール・チラシ・ウエブ・メール等々の媒体を通じて、近年飛躍的に高まりました。一方、本当に価値ある情報は、内部告発(食品偽装、建築偽装、収賄等々)によって公開されるか、一部のアクセス権限をもった人でないと入手できないことが多く、本当に有用かつよりよい情報が入手できているのかどうかは深く考察する必要があるというのもまた事実と思います。

2.経営に必要な情報とは?
皆様も日々社業に専心されるなかで、様々な社内情報にも触れ、もっと会社を良くするにはどうしたらいいのかということで頭を悩まされていると思います。『何か良い手法はないか』、ということはよく耳にすることですが、果たして経営手法に関する情報は不足しているのでしょうか。情報が溢れているという意味では、経営手法に関する本や講演、セミナーの類は、挙げれば切りがないほどです。社内を見廻しても、様々な経営指標や業務情報が溢れていることでしょう。
経営手法といえば、例えば、”シックスシグマ””TOC理論””バランスドスコアカード”、もっと言えば、CPM・ERM・RFM…といような3文字マネジメント手法も乱立しており、一体どれが何を目指してどういうものなのか、どう違うのか、同じようなものなのか、わからなくなってしまっているのではないでしょうか。
例えば、”シックスシグマ”と似たような手法は古く”ZD運動”というものがありました。”TOC理論”や”カンバン方式”もベーステクノロジーは”LP(リニアプログラミング)”として実証されています。”バランスドスコアカード”は指標の体系化という意味で”MBO(目標による管理)”や”成果主義人事評価システム”がネーミングを変えて復活したモノです。このように考えると経営手法という意味で人類は近年本当に進歩してきたのか疑いたくなります。

3.経営手法の罠にはまる
経営に役立つ情報とは、それを軸に、業績や企業価値向上に結びつけられるかどうかということになります。それが短期的であるか中期的であるか、質量ともに充分なのかが問題なのではありません。その情報がどうしたら役に立つのか、どう使えばいいのか、それを使うことによって何がもたらされるのか、そのためにどうすればいいのか、という部分の曖昧さによって必要な意思決定がなされず、企業が難破してしまうことが問題であると考えています。
IT技術の発達や情報収集効率の向上によって、本当に必要な情報は何で、それを駆使することによって問題や制約条件を発見するところまでは大凡の企業ではできつつあると思われます。それに対して、何をどのように計画しそれを具体的行動計画に落とし込むということがなかなかできず、業績向上や企業価値向上機会を逸しているのではないでしょうか。

4.罠から抜け出すには:知っていることと出来ることは違う
企業人として非常に陥りやすい罠です。『こうなっている』『こうすればいい』『ああすればいい』『こういうこと・ああいうことを知っている』、ということと、それを実践して成果を刈り取るということの違いがわかっていないという罠です。計画倒れまでもいきません。方針倒れの状態です。実際にはどのような状況かというと、難易度の高い戦略の実行というレベルだけでなく、日々の業務レベルでも実践できていない、という状況です。そんなことはない、という声が聞こえてきそうですが、会社で掲げる高邁な経営理念や理想、目標にここ数年でどれくらい近づけたのか明確に認識できている企業はあまりないように感じます。昨日を今日に繋ぎ、今日を明日に繋ぐことだけで本当にそれが達成できるのでしょうか。

5.経営哲学
まずは、実行することが一番苦しいことであることを皆が知ることが重要です。さらに苦しみの先には必ず光があることも見せなければなりません。これらは、永続的な実行状況を作り出すために重要なことと考えます。これらの事を理解していないと、出来ない理由をいくらでも並べ立てるという状態になります。まず、やると決めること、計画を立てること、やってみること、修正すること、それらを実直にやること。これってどこかで聞いたことありませんか。それがヒントです。

6.余談
前職時代、私がまだ駆け出しであったころ、体調を崩しながら仕事をした時に上司に言われた一言が忘れられません。”俺は風邪をひかないと決めている。決めているから風邪をひいたことはない”とのこと。その上司は退職するまで風邪をひきませんでした。まさに”コミットメント”ですね。

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