2009.06.16

第76回 (A) IFRS原則主義が意味するもの【経営・会計最前線】

コンサルティングサービス部 部長 公認会計士 岩佐 泰次

IFRSの特色の1つに「原則主義」があります。これは詳細な適用基準を設けずに基本的な考え方を重視して会計処理を決定する考え方で、一般的には米国基準や日本基準との比較でそのように言われています。これはIFRSが当初から様々な国・地域での適用を想定していたためであり、米国基準ではなく、IFRSが全世界に広がった背景の1つと言われています。具体的にどの程度違うかですが、基準書のページ数でみればIFRSは米国基準の1/10程度になるようです。加えてIFRSでは数値基準がほとんどありません。

例えば、ファイナンスリース取引の定義でみればIFRSも日本基準も実質的には同じです。ただ日本基準では、リース期間が経済的対応年数の75%以上とかリース料総額が見積現金購入価額の現在価値の90%以上などといった具体的数値基準があるがゆえに、結果的に形式基準となっています。この場合に数値基準がなかった場合を想定いただければ原則主義のイメージが沸くのではないでしょうか。他にも連結範囲、減価償却方法、繰延税金資産の回収可能性など、原則主義が反映された基準は多数あります。

このように原則主義においては詳細な適用基準がありません。したがってIFRSだけで実際の決算実務をまわすことは難しく、原則的考えの枠内で各企業において自社のおかれた環境や取引の性質を踏まえて、各企業が自ら実務上の適用ルール、つまり「グループ会計基準」を策定する必要があるのです。「グループ会計基準」の策定が必須であること、これこそがIFRS原則主義が意味するものなのです。

これに対して、今でも「グループ会計基準」と呼べるものはないが、決算はまわっているという企業もあると思います。ここにはもしかしたらASBJからこまめに公表される実務対応指針に示される具体的数値基準の存在があったのかもしれません。あるいは監査人の協力が大きいのかもしれません(最近はかなりスタンスが変わってきているとは思いますが・・・)。ただ日本にIFRSが導入された場合、日本の金融庁やASBJが独自にIFRS解釈指針のようなものを公表することは想定されていませんし、公表してはいけないことになっています。IFRSの解釈指針は、IFRIC(IFRSの解釈指針を策定する機関)だけが公表できるのです。全世界からの要望に対して、必要と思われるものについて解釈指針が公表されるのです。これまで、経済界などからの要請に対してASBJがこまめに公表してきた実務対応指針などは事実上期待できないのです。

ASBJからの自立、あるいは監査人からの自立といった点は、IFRS原則主義が求めるもう一つの側面なのかもしれません。

MAIL MAGAZINE

メールマガジン

NEWS

ニュース

SEMINAR / EVENT

セミナー / イベント

セミナー/イベント一覧を見る

お問い合わせ