2009.07.01

第77回 (B) 連結経営システム構築に潜む3つの罠と卵【ケース・スタディー】

事業開発ユニット 事業企画グループ長 玉村 健

驚きました。1Q84。村上春樹氏の新刊書籍です。
“発売前に情報を一切出さなかった”ことが、この爆発的な売れ行きの理由だそうです。
いかに有効な情報をタイムリーに提供できるか、を日々考えている我々にとって”情報が無い”ことが好転するとは眼から鱗が落ちる思いでした。
そうなのです。
このメールマガジンを購読いただいている中の多くの方も含め、我々は”いかに有効な情報をタイムリーに”を日々考えているのです。

連結経営に必要な情報とは何でしょうか。それはマネジメントを行う経営者が意思決定を行うために必要な情報です。
これは当然の話のようで、実際には簡単ではない話なのかもしれません。
当社の立場にいると、世にアピールされる成功事例も多く耳にしますが、決して笑えない失敗事例も多く耳にします。

今回は連結経営システムを構築するにあたって潜む3つの罠を紹介し、連結経営システム構築の成功の条件を考えてみたいと思います。

~お断り~
以下に示す事例は、DivaSystem導入プロジェクトの事例ではございません。また、特定のプロジェクトを示しているわけでもございません。

■その(1):誰も見ない連結経営システム
巨額な予算と時間を使って構築した経営システムのデータを、見るべき人が見ていないという事例をよく耳にします。
例えば、こういう事例です。

ある傘下企業50社を誇るA社の経営企画部門が、連結経営システム構築プロジェクトを立ち上げました。
プロジェクトには早期からコンサルティング会社も参画し、要件定義Phaseにおいて次世代グループ経営のための連結経営指標を定義。
その連結経営指標をゴールとしてシステムの構築を行い、2年後に無事カットオーバーしました。
ところが、本番稼働後2ヶ月目にして肝心の経営者がその数値をあまり見ていないことが判明します。
少々古い話ですが、特に2000年前後のITバブル期のプロジェクト事例としてよくある話のようです。
我々の経験として、経営者の明確な意図がプロジェクトのゴールとして掲げられているケースほど、効果が高いシステム構築になる傾向があると感じています。
経営者から明確なビジョンと数値目標がグループ全体に行きわたり、それに基づいた連結経営システムを構築することで、血の通ったシステムとなるのです。
連結経営システムは経営企画部門や経理部門がオーナーのシステムではなく、連結経営者がオーナーなのです。

■その(2):子会社経営者、事業部経営者とのズレ
連結経営システムはグループ全般のデータを保持しています。
そのため、連結経営システムの担当部門が「グループ企業や事業部にも利用してもらえる」と、グループ各所の経営者に展開しようとするケースがあります。
こういった事例もかなりありますが、以下の2点の要素において実現に至らないケースがあります。

・子会社や事業部に展開した際にデータが粗すぎて使えない。
グループ全体規模(例えば連結売上高1兆円)での意思決定を行うために構築されたシステムのデータは、部分的な規模の意思決定を行う組織(例えば売上高100億円の子会社)にとってはデータが粗すぎるのです。

・子会社や事業部門の経営者とグループトップの経営者の視点が異なる
これも意外とよくある話です。子会社や事業部門では独自の経営システムを構築し、独自の視点での連結経営を実現しているのです。業種の違いにより仕方がないケースもありますが、グループ経営の課題として認識されている方も多いようです。グループの経営視点が合わないことが許容される場合、本当に必要とするゴールにのみ集中すべきでしょう。グループの経営視点が合わないことが許容されない場合、簡単ではない状況です。

■その(3):流せない情報を求めてしまう
連結経営システムはグループの情報の流れにおいて、最下流に位置するシステムです。
“経営者”という海に”情報”という水を流すにあたり、無理な要求を上流に求めることで実現に至らないケースがあります。

例えば、月次連結、あるいは日次連結といった制度連結決算よりも細かい単位で連結経営情報の作成を行う場合、必ずこの点をクリアしなければなりません。
短いサイクルでグループ経営情報を作り上げる場合、制度連結決算同様の情報提供を子会社などに求めることは現実的ではありません。
この課題においては”データを連結経営システム側で作る”という”みなし”の解決方法があります。配賦処理などがそれに該当します。

□連結経営システム構築にあたって大事なこと
以上、3つの点に絞って連結経営システム構築に当たっての罠を述べてまいりました。
大事なことを極めてシンプルに表現します。
連結経営システム構築にあたって、重要なのは
「必要とされている情報は何か?」を明確にし
「いかに簡単に作るか」です。
必要とされている情報は経営者より示されなければなりません。そして、それがプロジェクトのゴールとなるはずです。
あとは、そのゴールにプロジェクトチームが進み続けているかを監視することが重要です。

村上春樹氏は今年の春、エルサレム賞受賞の場で、システムと卵のスピーチを行いました。
あの場でのシステムとは武器を意味し、卵とは市民を意味しました。
幸いにも(?)連結経営システムは人を殺しませんが、その作り方、使い方によっては企業グループを殺しかねません。

このメールマガジンを購読いただいている中の多くの方も含め、我々”卵”は有効な”システム”を作り、それが継続するよう管理し続けなければならないのです。
当社は常に”卵”の側に立つ存在でありたいと願っております。

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