2009.07.29

第79回 (A) 次は、どのエレベータがくる?【経営・会計最前線】

ビジネスソリューションユニット 第5グループ長 竹村 弘樹

とある上場会社のCFOの方との会談の後、エレベータホールまでお見送りいただいた際の出来事です。そこは、エレベータが6基ある34階建てのオフィスビルで、そのCFOの方はおもむろにこうおっしゃいました。「(エレベータのボタンを押すと)どのエレベータが来ると思う?」とそれ以上はなにも語りませんでした。

この一言の真意として、私は「予測」することの重要性を示唆されたと考えています。
通常、ボタンを押した際、どのエレベータがくるか誰にもわからないし、予測することは全くばかげていると考えると思います。しかし、予測し続けるとなんらかの考慮事項が見えてきます。例えば、同時に複数階で呼ばれた場合の優先ルールや通勤・昼休みなどのピーク時とそれ以外の利用者の増減の影響など、見えない未来を見ようと努力しつづけることで情報の蓄積が行われ、その情報から未来の予測がある範囲内で可能となってきます。

さて、このエレベータの予測と経営に関する思考は遠いものでしょうか。予測という行為を経て意志決定されていると考えると同じ種類の課題に見えてきます。エレベータの話を「外的要因の予測」と「制御ロジックの予測」という2つの視点で考えてみたいと思います。

まず、「外的要因の予測」ですが、エレベータでは通勤、昼休みなど特定の時間帯に恒常的に発生する外的要因や店子の退去、カフェの開店など環境変化の外的要因などにより利用者の顕著な増減が発生しますが、いずれの外的要因の予測にも情報収集力が重要となります。この外的要因の予測が重要視される点から考えると経営においては戦略意志決定のサイクルに近い印象をうけます。戦略意志決定では、不確実性を利益機会に変換することが要求されます。すばらしいビジネスプランでも外的要因の考慮なくして予測精度を上げることは不可能なため情報収集力は重要なポイントの一つです。しかし、リーマン・ショックなどの大きな環境変化の外的要因を的確に予測することは不可能なため、適切なサイクルで戦略や計画を修正するローリング・フォーキャスト・マネジメントを機能させるなどの対応を準備しておくことで不確実性を補っていくことが必要となります。

次に「制御ロジックの予測」ですが、エレベータでは制御ロジックの予測と予測結果とのギャップを認識し、さらなる予測精度向上には考慮要素は何なのかを分析することが重要となります。この制御ロジックの予測とギャップ分析という点から経営においては業績評価(PDCA)サイクルに近い印象を受けます。業績評価サイクルでは、実行計画と行動結果とのギャップ解消が要求されます。そのために中長期→年度→四半期→月次へとサイクルの時間軸を短くし、全社→カンパニー→部門→チームなど分権化された責任単位や戦略思考軸(製品、顧客など)などにサイクルを分割した上で計画と結果を比較するとギャップ解消のアクションが具体的に見えてきます。

経営とは計画と結果とのギャップを解消することです。そのためには「外的要因の予測」により実行計画の精度を上げることと、「制御ロジックの予測」により期間・責任単位・戦略思考軸で迅速にギャップを認識し、原因分析と対策を意志決定していくことが極めて重要になります。但し、その分析と対策の意志決定は推論力と現場からのフィードバックがポイントとなり極めて人に依存するため、一朝一夕ではいかんともしがたい領域です。

結局、現在の組織では、持ち株会社制度、カンパニー制度を筆頭に事業部、部課、チームなど分権化が顕著に進むなか、求められているのは経営者の意識をもったコア人財ということです。コア人財の育成についてはここでは触れませんが、冒頭のCFOの方は、予測とギャップ解消のための推論力を養うことを説いてくれたのではないかと考えています。私個人も少人数ですが組織をあずかる者として、経営者意識を持ったコアな人財となれるように精進していきたいと思います。

最後に、弊社ではグループ経営と言う視点で業績評価サイクルとローリング・フォーキャスト・マネジメントを実現するノウハウと手段を提供していくことで、御社のコア人財を支援し続けていきたいと思います。

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