2009.09.01

第81回 (B) 制度連結は過去実績の遡及行為、管理連結は将来の企業像をイメージするためのもの【経営・会計最前線】

取締役 事業開発ユニット長 沖野 元司

先日、大手企業の経営企画室長との面談の中で、制度連結システムと管理連結システムに求めるものの違いに関してお聞きしてみました。室長は在籍する企業の経営層の言葉を引用し、以下のようにお答えになりました。

「制度連結(決算)は、企業の業績を財務諸表として表現するために1ヵ月かけて遡及している行為である。当然、数値の正確性と説明責任を果たすことを重視した外部向けの報告数値を作る業務なわけです。ですから制度連結システムに求めるものというのは、間違いがなく・早く処理でき・データのトレーザビリティに優れているもの、ということになりますね。管理連結(管理会計)は、企業内において、連結経営を行うために設定されたあらゆる重要な業績指標に関して、明日以降どうなるのか?を判断できる材料を提供し、経営の意思決定とアクションにつなげられるものではないでしょうか?そういう意味では、求められるものとしては、決算プロセスをベースにした管理数値(制度・管理一致の志向)・決算プロセスは無視した数値・決算とは粒度の違うもの(大量データ)・多次元かつアドホックに分析できる・簡単にシミュレートできるなどの処理が求められると思います。ほかにもいろいろあるとは思いますが・・・。」

今まで制度と管理の違いをいろいろ検討してまいりましたが、この違いを簡潔に表現したものではないかと感じました。
決算はもちろん最重要業務ですが、経営者にとっては、過去実績の分析以上に、翌月・翌期・3年後・5年後をいかにイメージできるかが最も重要なテーマだと表現したともいえるのではないでしょうか。さらに発展した解釈をしますと、経営者は常に先の自分(企業)が成功しているイメージを抱くということがその経営における意志決定につながっており、その根拠を得るために、管理連結を通してその意志を確固たるものにするのではないかということです。

また、別の大手企業の情報システム部門の部長からは連結予算に関する編成方法に関して、以下のようなお話をいただきました。
「事業部門の連結ベースでの予算編成の仕組み?いやー、ほとんど手作りですよ。エクセルです。さらに言うと、予算を立てる担当者たちは長年蓄積されたノウハウと(カン)のようなもので数字を作っているようです。もちろんそれなりの根拠ある係数など利用して作っているようですが、他人には理解できないような職人芸的なところがあるようです。予算編成をシステム化すのであれば、私個人の意見としては人間に一切関与させず、システムに数値を作らせたいです。また、そうでなければシステム化する意味がないのではないかとも思っております。」

この方は、若干誇張した表現をされていますが、(システム化)という言葉に過度に反応されたのかもしれません。予算編成を行う各事業の統括責任者は、トップダウンで降りてきた数値を意識しながらも自身の経験と意志の下に数値を作り上げているのではないかと想像しました。確かにデータをインプットさえしてしまえば、コンピュータシステムが理想的な数字を全自動で作成してくれれば、楽であり理想とも言えます。ただし、そこには必ず人もしくは組織の意志が介在しなければならないはずです。この予算数値の確定も管理連結の大きな業務の一つといえます。

これらから、管理連結システムに求められるものとしては、決算数値(実績)・決算をもとにした管理数値(実績・予算・見込み等)・決算をもとにしない連結経営上の重要項目ごとの数値(予算・実績・見込み等)の処理が行え、且つそこに人・組織の意志を反映することが出来る仕組みである必要があると考えます。また、これらの仕組みを利用して、決定したサイクルごとに関連当事者(経営者・カンパニー長・事業部長・グループ会社・地域統括等々)が、分析・検証し、戦略の見直しや追加施策をアクションすることができる業務基盤を整備することが「連結ベースでのPDCAサイクルの定着化」につながるのではないでしょうか?

わが国でもIFRS導入が決定した中、今後各企業においては、重要な制度対応と並行して、管理連結の重要性が今まで以上にも増して強くなることが予想されます。当社としても、企業の皆様における「連結ベースでのPDCAサイクルの定着化」に貢献すべく更に精進したいと考えております。

※本文で、「意思」を「意志」として表現しましたが、一般的には全く同義のものであると説明されています。私としては、当社の代表が「志」を「思い」よりも強く意識していることに影響を受けあえて「意志」を使わせていただきました。日々の個人の生活の中でも「意志決定」は必要ですが、流されて毎日を過ごしてしまうとせっかくの「意志」も「意思」へと劣化し、気がつくとそれは単なる「石」として転がってしまうものとなりかねません。気を引き締めねば、と思うこの頃です。

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