2009.09.15

第82回 (A) 決算早期化、IFRS水準【経営・会計最前線】

ビジネスソリューションユニット 第5グループ リーダー 公認会計士 岩佐 泰次

IFRSでは、注記の分量が大幅に増えるとか、定性的情報の開示も大幅に拡充するとか、様々な決算早期化への影響が言われていますが、実務上もっとも深刻な打撃(?)を与えるのは、決算期の扱いではないかと考えています。まずは決算期が異なる場合の、IFRSと日本基準それぞれの規定をみてみます。

1)IFRSでの規定(IAS第27号)
「実務上不可能でない限り(unless it is impracticable)」
「親会社の財務諸表と同じ日付の財務諸表を追加で作成する(shall be prepared)」
2)日本基準(連結財務諸表原則)
「決算日の差異が3ヶ月を超えない場合には、子会社の正規の決算を基礎として、・・・できる」

つまり現在日本基準で3ヶ月以内という事実だけで容認されている決算期ズレですが、IFRSでは3ヶ月という事実だけでは容認されないのです。「実務上不可能でない限り」という限定的なケースについてのみ容認されるのです。ここで「実務上不可能でない限り」とは、「あらゆる合理的な努力をしても準拠できないこと」と定義されています(IAS1号)。つまり、決算期がズレている場合、仮決算へ向けてあらゆる努力が必要なのです。仮決算するということは、現在12月決算会社について3ヶ月という猶予がある中で回っている連結決算業務を、3ヶ月の猶予なしで、4月のピーク時に全ての子会社をカバーしないといけないことを意味しています。今の延長線上では、決算を回すイメージが湧かない会社も多いのではないでしょうか。

また監査上も決算期統一や仮決算対応への取組姿勢のないクライアント企業に対し、合理的な容認理由は見出しにくいのではないでしょうか。会計基準がグローバル水準になることは、監査水準もグローバルになることを意味しています。J-SOXのような、J-IFRSというローカル視点の配慮はないのです。

この点、日本が国際会計基準設定のイニシアティブをとっていれば事情は変わっていたのかもしれませんが、残念ながら欧米主導の会計基準です。欧米では、決算期は子会社含め12月で統一しているケースが多いのです。外資に買収された日本企業が、軒並み決算期を12月に変更させられていることを見ればその現実がよくわかると思います。欧米企業にとって同じ決算期で連結業績を把握することは、制度上のルールに関わらずグループ経営を進めていく上で当然の感覚なのだと思います。

決算期の問題は、見方を変えれば日本企業のグループ経営の質に対する問題提起なのかもしれません。今回取り上げた決算期に関する扱いだけでなく、マネジメントアプローチでの内部グループ経営情報の開示要請や、法人単位ではなく事業単位の重視など、IFRSへの対応課題がそのまま日本企業のグループ経営上の本質的課題となっていることも多いように感じています。

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