2009.09.29

第83回 (B) 『無駄』の中に宿る職人魂【ものづくりの視点】

グループコミュニケーションウェア開発グループ長 中西 明

以前、我が家の車のヘッドライトを間近で観察していたところ、バルブの前面に突き出ているパーツの先端(パーツの名前は不明ですが)が、その車のメーカーのロゴマークをモチーフにしたデザインであることに気付きました。
その部分は、顔を近づけてよくよく観察しない限り発見することができない地味な部分であり、普通に車へ視線を向けただけではその存在に気付くことはありません。
また機能面、性能面に対しても何ら効果を与えるものではなく、もちろんそのヘッドライトで照射された路面にメーカーのロゴが浮かび上がるわけでもありません。
私自身は自動車の製造コストに関しては素人同然ですが、少なくともこの手間のかかるパーツを利用したが故に、相応のコストを伴っているであろうことは容易に推察することができます。と同時に、これは氷山の一角に過ぎず、まだ私の目の届いていない場所に職人としての多くのこだわりが隠されているであろうことも予測できます。

このような、ユーザからすれば意味の無い部分へのこだわりは無駄なことなのでしょうか?
人によって捉え方は賛否両論かもしれませんが、少なくともモノ創りに専念する私個人としては、それを作り上げた職人の方々に深い共感を覚え、また尊敬の念を抱いています。
これらは決して『無駄』の一言で片づけられるものではなく、将来に繋がる『無駄』であると考えています。当然のことながら、そのこだわりの内容や、それを成し遂げるために費やすであろう労力とのバランス次第であり、一歩間違えれば不本意なレッテルを貼られる状況に陥る可能性があります。しかし、普段は誰一人として気付くことの無いであろう細部へのこだわり自体は、モノ(製品)に対する作り手の熱意や愛情があればこそ果たせることであり、そのような職人の手により将来高い価値を生みだす新たなモノが創り出されることと確信しています。事実、今日までの技術の進歩や様々な発明は、彼らの熱意の下に成り立っていると言っても過言では無いと考えています。

現在、DivaSystemを始めとする弊社商品群も、数多くの職人の手により構築されています。もちろん、過去に偉大な足跡を残された諸先輩方には遠く及ばないレベルかもしれませんが、少なくとも各々が職人としての誇りを持ちつつ日々の開発に取り組んでいます。
不幸にして現在我々を取り巻く経済環境は厳しいものであり、無駄を徹底的に排除すべく職人としてのこだわりについても妥協を余儀なくされるケースに今後直面するかもしれません。
しかし、例えそのような状況下においても彼らの職人魂を尊重し、職人としての灯を絶やさぬよう未来の商品開発へと繋げて行きたいと考えています。

余談となりますが、冒頭でご紹介したロゴマークは、悲しいかな何時の頃からか撤廃されていました。恐らく生産コストの削減によるものだと思いますが、個人的にはこのご時世故に仕方が無いと思う一方、非常に残念にも感じます。
しかし、そのメーカーの開発陣には、依然として誇り高い職人魂が宿っていると信じ、今でもそのメーカーの車を乗り継いでおります。

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