2009.10.14

第84回 (A) IFRSと世界の多極化はニッポン「本社」のガラパゴス化を破壊するか?【経営・会計最前線】

取締役 ビジネスソリューションユニット長 兼 社長室長 川本 一郎

早いもので米国のリーマンの破綻から1年が経過した。米国のサブプライムローン危機に端を発した世界的な金融不況から各国とも立ち直りに向けて政策総動員といったところだが、今のところその経過は国ごとで大きく異なっている。ただ一つはっきりしているのはG8諸国の回復が遅れているのに比して新興国が復興基調にあるということになろうか。去る10月6日に豪州がもはや危機は脱したかのようにG20として初めて利上げに踏み切ったし、各種調査機関の発表では中国・インドの2010年の経済成長率が7%~10%に達し、危機前の水準に戻ることが確実視されている。反して日米両国ではG20で利上げに入るのが一番遅いと予想され、世界を牽引していた米国の消費市場の回復は当面見込めそうもない。世界経済の枠組みが今回の金融危機を契機としてG20の相対的な地位向上とともに多極化へ向けて加速する。そんな構図がおぼろげながら見え始めている。

そもそも外需に頼らざるをえない日本はこの変化にどう対応するのか。それこそ思い切った発想の転換が必要になってこよう。例えば、これまでは日米欧の市場規模が相対的に大きかったがゆえに多くの製造事業者はそこを主戦場としてきた。一方、新興国では価格帯や必要な機能・性能が大きく異なることが多く、10~20年後を見据えこの市場と真剣に向き合ってきた企業は数限られる。ところが日米欧の市場が一向に復活せず、まして日本は人口減で成長に制約が見込まれる状況では、戦う市場の見直しは避けられないだろう。ましてや世界中で高額ブランド商品の売れ行きが低迷し、逆に「生活防衛関連銘柄」という言葉が生まれたように新興国市場を制する商品・サービスが逆に日米欧を席巻するといったシナリオが現実味を帯びてきている現状では尚更である。

このような「見直し」は、同時にニッポン企業の機能配置をも根本からの再考を迫るだろう。例えば、日米欧の消費者市場をターゲットとするなら中国や東南アジアで製造し最終消費地の欧米へ輸送し、そこで欧米メーカー商品に伍して売るのが定石であった。ところが、文化圏が全く異なる新しい戦場では現地消費者の需要を肌感覚で把握しながら設計・開発し、現地の競合商品に負けないよう低コストで生産し、かつ差別化しながら宣伝し消費者に購入してもらう必要がある。つまり生産コストを低減し価格優位性を保つためだけに人件費の安い中国や東南アジアに製造工程を移転していた時代から、今後は新興国に直にマーケティング・設計・調達・生産・物流・販売といった諸機能を最適に配置することが求められる。

以上を踏まえると、本社機能は本国に置くのが一般的だったニッポン企業にとって製造以外の機能も最終消費地である新興国に移転することが一般的な選択肢となるかもしれない。もちろん新興国は一括りでは捉えられないので、各事業・製品を地域軸でポートフォリオ的に運営していくことが企業戦略上必要不可欠となる。管理系部署についても例外ではなく、本社に集中させるか・現地にかなり委譲するかの判断を迫られるだろう。このメルマガの読者の多くが所属する経理部署についても必ずしも日本に置く必要がないと判断する企業が増えてもおかしくはない。

そして、この状況はIFRSによって大きく加速するだろう。IFRSは日本では2015~16年の適用が予定されているが、実は日米が世界的に遅れていて既にEUを初め多くの新興国で適用されている。適用が進めば会計のモノサシが統一されるだけでなく、会計技術の国境がなくなり、人材の流動化が実現する。日本基準を知らないことが外国人を本社経理部に入れない理由にはならず、現地基準がIFRSを適用すればお互いの業務がブラックボックスでなくなり、経理部署の機能配置・人員配置もグローバル観点で設計することが可能となる。経理部署は世界中から優秀な「人財」を選べるようになり、流動性が高い海外の「人財」確保のため採用・育成・研修といった人事プロセスもドラスティックに変わるかもしれない。ニッポン「本社」のガラパゴス化が破壊されるとした所以である。

翻って読者の皆さんが、グローバル規模での流動化の波にもまれる可能性が高いということは、とりもなおさず弊社と弊社製品・サービスも同じ状況に直面するということである。IFRSを契機に「ガラパゴス化」した日本市場をターゲットとする視点から脱却し、グローバルの観点での進化を弊社も目指さねばならない。そのためにもグローバル化の波に対応する開発・サービス体制の構築を急がねば、と感じている今日この頃である。

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