2009.11.11

第86回 (A) なにもわかっとらんなぁ2 ヨーロッパ税制とファウストの話【経営・会計最前線】

株式会社ディーバ 代表取締役社長 森川 徹治

先日、オランダのアムステルダムで実施した日本企業の現地法人向けセミナーの基調講演で、税制の話を拝聴した。日本の法人税率が40.5%であるのに対し、オランダは25.5%、その他の主要EU諸国も同様の水準というものである。一方、セミナーの話題ではないが、一般消費税については日本の5%に対して19%であり、法人税が安い反面、消費税は高く設定されている。

企業から多くの税収を得、個人負担を少なくすることと、企業の税収を少なくする一方で、個人負担を大きくすること。どういう思想の違いからくるのだろうか。ふと疑問を感じた。

ホテルからセミナー会場へ徒歩で向かう途中、今回のセミナーの主催者であるJRIE(日本総研ヨーロッパ)の社長、福原さんからこんな話を伺った。「ヨーロッパでは、食材でも何でも材料の値段はそれほど日本と違わないのですが、一度人の手が入るととても高くなるのですよ。人件費、つまり人の手によって生み出される付加価値を大きな価値として認めているのです。」というものである。

個人消費の負担と高い人件費を容認する社会と、かつて、相対的に低い人件費を重要な競争力の要素として世界の市場を席巻した企業の収益を税収の中心として産業振興を中心政策としていた制度を引きずる社会。経済は社会の基盤である。結局は、いかに個人生活を安定かつ豊かなものとできるかに尽きる。

ゲーテの戯曲『ファウスト』の結末は、「人間の幸福は人の役に立つこと」という主張と記憶している。生活の豊かさとは、一人ひとりが何かの役に立っていることを精神的・経済的両方で実感できることを意味し、それが当たり前になって初めて豊かな社会と言えるのではないだろうか。役に立つ実感を分かりやすくするためには、経済価値に置き換えることも一つの有効な手段である。そのような視点で考えると、ヨーロッパの人件費の高さも納得がいくようになる。

また、法人税を低く抑えるというのは、外国企業の誘致がしやすいということでもある。自国の企業だけで雇用が守られ、かつ個人への還元も十分にできているのであれば、高い法人税率も機能するが、そうでない場合は法人からの税収よりも雇用を優先し、税収は消費を通して獲得するという考え方は、個人を大切にするという視点と実はリンクしている。高い消費税が受け入れられる社会とは、より経済的に成熟した社会と言えるのかもしれない。そんなことを考えさせられた。

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