2010.01.13

第90回 (A) 一枚の写真 「1967年の東京」【経営・会計最前線】

株式会社ディーバ 代表取締役社長 森川 徹治

みなさま、明けましておめでとうございます。今回は新年のご挨拶をかねて、43年前の一枚の東京の美しい写真を見て感じたことをテーマといたしました。天下国家を語る立場も力もありませんが、それを構成するひとつの事業体としての心意気のようなものです。それでは、本年もなにとぞよろしくお願い申し上げます。

先日、いちよし証券の武樋社長より一枚の写真をいただいた。昭和42年、西暦で言うと1967年の東京の写真である。パレスホテルより日比谷公園方向を見渡した景色の空と地上の境には左に羽田空港の光、右中央に東京タワー、そして右端に霞ヶ関ビルがあるばかりである。雨上がりの夜に撮影したものであろう。路面は光が反射して当時の皇太子ご成婚記念で造られたという噴水が眼下にライトアップされて美しい。空も今ほどの明るさはなく、ぼんやりと街明かりを映している。そんな写真である。
今私たちが目にしている東京と比べてなんとシンプルなことだろうか。この写真の翌年に日本は世界第2位の経済大国となった。そしていま、約40年維持した指定席を中国に明け渡そうとしている。
今私たちがリアルに目にしている東京はそういう時代の東京である。

現在の日本は経済の縮小という現実に直面している。モノの価格は安くなり、企業の収益は圧迫され、従来の報酬と雇用を支えられなくなっている。しかし、街には新たなビルがどんどん増えモノもあふれている。40数年前の東京の写真と今とを見比べるとこれではデフレになって当たり前だと感じる。もちろん全体的経済成長を目指すことは重要である。しかし、東京の姿を見ると、これから私たちが目指す経済発展とはなんなのかと考えてしまう。この街をさらにモノで埋め尽くすことになんの意味があるのだろうかと。

話は変わるが、かつて事業が停滞したときのことである。ある経営者の先輩より「一人あたりの付加価値生産性」について強く指導を受けた。事業規模ではなく、事業価値に対する品質という視点である。いまでこそ少しは意識するようになったが、当時は売上と利益を一つのどんぶりでしか見ていなかった。その先輩は言った。「経済的付加価値とは人間が創るものだ」そして続けた。「企業とは、社会に対する付加価値を創造できる人財の育成を通して社会貢献する公器である。その実践のためには経営判断で使用する情報において人間と事業を決して切り離してはいけない」

企業であれ自治体であれ、経営というものを必要とする集団では、複雑な現実を理解するために大量の情報を抽象化する。”売上”や”利益”は事業活動を抽象化したものとしてもっとも一般的であるが、この抽象化には落とし穴がある。経済活動の主体たる人間が見えにくくなるという落とし穴である。「一人あたりの付加価値生産額」という視点は、あくまで経済主体は人間であるという原点を再確認するきっかけとなった。

GDPとは、国民経済活動の連結合計である。人間が普通に生きていくために必要な財など、人種が異なっても大してかわるものではない。よって、国民の人口の多寡がGDPにとって重要な要素となる。人口減少、特に労働人口の減少という基礎体力を失っている中での経済規模拡大は至難と言っていい。このような時こそ、あらためて人間という単位にとっての経済という視点が大切になる。
国という視点では確かに規模は重要であろう。しかし、GDPがいくら大きくても、一人あたりのGDPが相応でなければ豊かさを実感することはできない。また、一人あたりのGDPという視点からは従来の大国とは別の個性が見えてくる。最近のわが国の一人あたりGDPはいずれの計測方法でも20位を超えるものではない。
人間という視点を反映することで本当の豊かさを考えることができるのではないだろうか。

経済規模大国から経済品質大国へ。多様な国、人々の生き方より学び、人間のための経済という視点で発展する社会であってほしいと思う。
まずは行動、結果は必ずついてくる。そのように信じ、新たな一年「実業の実践」に取り組んでいこうと考えている。

MAIL MAGAZINE

メールマガジン

NEWS

ニュース

SEMINAR / EVENT

セミナー / イベント

セミナー/イベント一覧を見る

お問い合わせ