2010.01.13

第90回 (B) IFRS導入時期の「適用」と「開示」の違い【経営・会計最前線】

ビジネスソリューションユニット 第2グループ長 公認会計士 斎藤 和宣

昨年12月11日に連結財務諸表規則などの諸制度が改正され、日本においても国際財務報告基準(IFRS)での情報開示の仕組みがまたひとつ整備されました。また、改正に引き続き、2010年3月期で任意適用することを前提とした、IFRSでの連結財務諸表の開示例が金融庁から公表されました。今年からのIFRS任意適用に向けて法制度等の環境が順次整備されており、いよいよ今年2010年は、日本における日本企業によるIFRSでの情報開示が始まる大切な第一歩の年になるだろうと感じています。
IFRSのアドプションは、グローバルで広く採用されている会計基準を日本でも採用するという点で大きな意義があり、任意適用で早期にIFRSを採用することはグローバルに活動する企業にとっては、魅力的な選択肢の1つであることは間違いないでしょう(ただし、このことはIFRSが必ずしも優れた会計基準であることを意味するのではなく、様々な評価があることも認識しなければなりません)。
これから、強制適用を待たずに任意適用を志向する会社は多くなるだろうと想像していますが、その意思決定にあたっては、日本基準の並行開示の問題は慎重に見極める必要がある課題だと考えています。そこで、並行開示について金融庁から公表されている資料の「提出書類のイメージ」が非常に分かりやすいので、当資料にしたがって考察してみます。

参考(金融庁):http://www.fsa.go.jp/news/21/sonota/20091211-7/20.pdf

並行開示のおおまかな要件として、日本基準での年度財務諸表を、適用最初の会計年度について作成しなければならず、それ以降の会計年度は差異に関する説明(概算額等)を開示することで足りることとされており、当初の想定よりも並行開示の負担は軽減されています。ただし、3月決算会社であれば4~6月(第1四半期)という経理部門にとって負荷の高い時期に、具体的にどのように稼動させていくかは重要な判断ポイントになるでしょう。
監査対象外とはいえ両基準の連結財務諸表を同時期に作成しなければならない点は、その負荷を考えると、移行時期を決定するにあたって大きなマイナスの判断材料になると思います。そうなると、当該決算期について複数の会計基準で財務諸表を作成することを避けられる、第1四半期からの”開示”は有力な選択肢になるでしょう。そして、IFRSの”適用”自体は開示する「前年度末」とする形が、個人的見解ですが、財務諸表を同時作成しなくてよい点で、最も負荷を分散することができると考えています。
また、米国基準適用会社の場合には、差異に関する説明(概算額等)の開示が省略されて、さらに並行開示の負荷が小さくなっていることを合わせて考えると、IFRS導入に向けた後押しをしているのは間違いないと感じています。

並行開示の問題は、決算システム面、プロセス面での導入にあたっても影響を及ぼします。複数会計基準での決算を数年間に渡って維持する必要がある場合と、ある一時期のみ対応すればよい場合とでは、対応が異なってくることが考えられます。並行開示の負荷が今回公表されたように小さくなれば、本運用にあたって完全な複数同時決算をする必要がなくなる可能性も充分あり、複数同時決算を前提としたシステム・プロセスにしなくてもよいことになります。
いずれにしても、2010年は、後戻りすることのないIFRSアドプションのスタート地点に立ったことを強く感じています。

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