2010.01.26

第91回 (B) 『実学』のこと【経営・会計最前線】

事業開発ユニット GMI事業グループ長 永島志 津夫

今ディーバでは「稲盛和夫の実学」がブームです。社内の若手向けに良書を紹介する試みをこの数ヶ月行っていたのですが、若手以上に40代の管理者層の方が熱心になっています。改めて読んでみると驚くほど今日的な内容であることに驚かされました。

私が最初にこの本を手にしたのは伊丹空港の出発ロビーの売店であったと記憶しています。
当時私は関西のあるお客様のプロジェクトに携わっており毎週のように東京と大阪を行き来しておりました。もともと会計専門でもない私が最初に管理会計のプロジェクトを担当したのが、この関西のお客様でした。手元に持っているものは2004年刷の日経ビジネス人文庫版ですので、管理会計システムが稼働して暫くたってからこの本を知ったことになります。私が担当していたお客様も経営ツールとしての会計に非常なこだわりがあったのですが、この本によって京セラの稲盛氏も会計へのこだわりがあることを初めて知った次第です。最初の刊行は1998年とのことですから、今から12年も前の出版ということになります。

ご紹介したい内容はたくさんあるのですが、是非ご紹介させて頂きたいのは、有名なアメーバ経営の会計上の基礎となる「時間当り採算表」です(第六章 採算の向上を考える)。
アメーバとは業務活動の組織単位なのですが、比較的小規模な組織となっています。社内の別組織から仕入が発生した場合、これを内部売買として認識します。内部売買の値決めをどうするかというのも管理会計の一大テーマになりますが、趣旨としては市場の実勢を直接お客様に接していない製造部門にも認識してもらう、ということにあります。
品質、納期、コストそして改善という要求に応えつつ日々製品を製造する方々の努力には頭が下がるのですが、ともすれば作っておしまい、ということになりかねないところに、市場と相対する緊張感を意識させる工夫が「時間当り採算表」に集約されていると思うのです。
また「時間当り採算表」は、会計というものが会社経営にこれほど貢献できるという好例でもあります。会社経営のノウハウというものは門外不出、限られた人だけのものということがほとんどだと思うのですが、一般書籍という体裁で京セラの経営ノウハウを公にするということは、大変な決断が必要だったのだと思います。

本書を読むと、「公」の考え方は随所で触れられているのですが、企業の情報開示において顕著です(第七章 透明な経営を行う【ガラス張り経営の原則】3 フェアなディスクロージャー)。
この節では、情報開示、特にセグメント情報の開示についての取り組みが紹介されています。セグメント情報は、複数の事業を営む企業体の活動状況を投資家が理解するのに役立つ情報である一方、製品群、事業群毎の売上推移、外販比率、費用構造、利益性などの情報が競合等にも公開されるため、開示がためらわれる場合もあります。
日本でセグメント情報の開示が制度化される前は日本のADR(米国預託証券)発行企業ですら多くが消極的な開示にとどまっていたのに対し、京セラでは投資家に対する情報開示を優先してセグメント情報を開示してきたそうです。この取り組みは1976年のADR発行以来ということですから驚かされます。

世は2010年になり、企業会計にマネジメント・アプローチが導入されることになりました。これはIFRSに関する一連の取り組みの中で、投資家、経営者にとって意味合いの大きなものだと思います。会計学的な議論もさることながら、IFRSの根底には「公」のものとして企業の情報開示を進め、経営者と投資家の情報ギャップを埋めるものだと理解しています。

遅ればせながらディーバでも昨年から管理会計ソリューションのご提供を開始しました。コンサルティングを行っていた当時、正直やり残した課題もあり心苦しい思いもありましたが、意を決して継続的にお客様の課題解決、ソリューションの拡充に取り組んでまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 

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