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2017年04月19日

株式会社ディーバ

第276回 (A) 「逆上がりの思い出」

プロダクトソリューション事業本部 連結会計事業部 連結会計コンサルティング1部 第1グループ長
安野 哲也

小学生の娘が「鉄棒の前転ができるようになりたい」というので、天気の良い休日、近所の公園に練習に出かけました。公園に着いて、本当に久しぶりに鉄棒というものを目の前にしたとき、高校時代のある出来事を思い出しました。

それは高校に入学して間もない体育の時間だったのですが、冒頭、先生が、「今日はサッカーでもやろうか。あ、でもその前に鉄棒もやっておこう。逆上がりをやって、できた人からサッカー。」 と思いつきのように言いました。
「サッカー」まで聞いて喜んだのも束の間、「逆上がり」と聞いて私は愕然としました。その時、私は16歳になっていましたが、16歳になってもなお逆上がりができなかったのです。まさか高校に入ってまで逆上がりをやらされる場面が来るとは考えてもおらず全くの不意打ちでした。

私の動揺をよそに、先生の逆上がりチェックがスタートしました。
皆、ポンポンクリアして、サッカーゴールの方へ嬉しそうに走っていきます。
「入学早々、まだ良く話しをしたこともないみんなの前で恥をさらすのか・・・」
「ひょっとして気合を入れてやれば、案外できるかもしれないぞ。」
「いやこれまでずっとできていないわけだし、突然できるわけないよな・・・」
あれこれ考えているうちに、自分の番が回って来ました。

皆の前に出て、覚悟を決めて、えいっとやってみます。
できません。2度3度と試したもののやはりできませんでした。
「すいません、できません。」先生に伝えて、私は隅の方に引っ込みました。
ほどなくして、鉄棒の周りに不合格者数名が残りました。仲間がいたのがせめてもの救いで、できなかった者同士、妙な連帯感も生まれまして、先生への恨み事など言いながら、遠くでサッカーをするクラスメイト達を眺めていました。

精神的によほどこたえたのでしょうか。その日私は帰宅するなり、2歳年上の姉に「逆上がりを教えて欲しい」旨相談しました。姉はひとしきり笑った後で「じゃあ、ご近所様の目もあるから、夜ご飯を食べてから公園で練習しよう。」と快諾してくれました。横で聞いていた母も笑って「じゃあ母さんも見に行こう。」という話しになり、その日の夜、母、姉、私の3人で、夜の公園に向かいました。
姉の教え方がうまかったのか、自分がよほど真剣に取り組んだためか、練習を始めてほどなく、あれほど出来なかった逆上がりが出来るようになりました。初めて逆上がりが出来たとき、心底ほっとしたのを覚えています。母、姉は、自分のことのように喜んでくれました。

さて、ふとこんな昔のことを思い出したのですが、改めて思ったのは、一般的に難しい年頃であったのに、自分は何でも家族に相談していたのだなということです。家族を信頼していたということがベースにあるのはもちろんですが、我が家の特色として、どんなことであっても、時に深刻な話しであったとしても、どこかに笑いを挟もうとする雰囲気があり、そのような雰囲気があったおかげで、話しを切り出しやすかったということがあるように思います。
自分が育った家庭がこのような雰囲気であったためか、日々大部分の時間を過ごす職場もこうであって欲しいと個人的に感じております。もとより職場は仕事をする場所ですので、何でも笑い飛ばしていたら大変なことになってしまいますが、話しやすくする、相談しやすくする一つの手段として、笑いの出やすい雰囲気作りに努めて行ければと思います。

冒頭の娘の鉄棒の話に戻りますが、私が娘の側に立って「いざと言うときはお父さんが支えてあげるから大丈夫だよ」と伝えると、あっさり前転ができるようになりました。娘にとっては落ちたらどうしようという不安が壁になっていたようです。娘の笑顔を見て嬉しくなった私は「お父さんも久しぶりに逆上がりでもやってみようかな」とよせばいいことをやってみました。
皆さんご推察いただけるかと思いますが、案の定、出来なくなっておりました。
「きっとお仕事で疲れているんだね」 8歳の娘になぐさめられながら家路につきました。